もはやオトナ級の緻密さ!『十二国記』【今もう一度読みたい!児童文学シリーズ①】
※画像はスクリーンショットです。
十二の「国」と十二の「王」、そして十二の「麒麟」。
この世界には十二の国があり、その一つ一つに霊獣である「麒麟」が存在する。その麒麟が天啓によって王を選び、王となった者は天啓がある限り不死となり、国や民を治め、麒麟は補佐として王を助ける。気候も習わしも政治形態も異なる国々の、王や麒麟、そして国民の様子を丁寧に描いた物語だ。
原点と言える『魔性の子』から、本編としては『黄昏の岸 曉の天』(講談社X文庫ホワイトハートおよび講談社文庫)まで刊行されている小野不由美氏の『十二国記』シリーズ。
『黄昏の岸 曉の空』以降、長い間刊行されなかったが、2012年7月より新潮社で新装版の発行開始に伴い、およそ12年ぶりとなるオリジナル短編集『丕緒の鳥』が2013年7月に発売された。待ち望んでいたファンは多かっただろう。
■児童文学らしからぬ重厚な物語
『十二国記』シリーズは、ジャンルとしてはアジアンファンタジーに入る。しかし、読者を魅了する、その壮大な設定の厚さと緻密さは一概に既定の枠へ収めることを躊躇われる。
政治問題、裁判制度、人種差別、性差別など、現代社会にもそのまま置き換えられるような課題に対して、「国とはどうあるべきか」「王とはどうあるべきなのか」と問いかけている。
著作は児童文学にカテゴライズされるが、内容の重みを考えると児童に該当する年代の子供が読むには少し難しいものかもしれない。筆者も最初に読んだのは小学生高学年であったが、何度も読み返しながら内容を理解し、最終的にを全巻読みきったのは中学校を卒業する頃であった。
■大学生になってから読むとまた違う!
昔読んだ本というものは、時間をおいて読み返してみると、初めて読んだ当時とは異なった印象を受ける、とはよく言うが、まさにこれが1つの例ではないだろうか。
幼い頃はただ人物を把握しストーリーを追うことに必死だったが、大学に入ってから読み返してみると、上記で挙げたような現実的問題の重みを感じると共に、文章表現の豊かさに舌を巻く。
難しい表現、単語でも、意味を理解し読み進めていくと『十二国記』の世界観を形作る一つの歯車として機能しているのがよくわかる。ひとつひとつの表現が読者をその世界に引き込むのである。
読めば読むほど引き込まれていく、むしろ、一度だけ読んで終わらせてしまうなんてもったいないと思える作品だからこそ、まだ読んだことのない現役の大学生に読んでほしい。
小野不由美氏の描く人物には誰にでもドラマがある。成功、挫折、勝利、敗北。彼らの人生を我々に覗かせてくれる。御茶目な行動に洒落た台詞。読み進めて行くほど、彼らの魅力を知り、緻密な設定が織り成す深い人間関係にのめり込んでいくだろう。
一度ハマったら抜け出すことのできない『十二国記』の世界にあなたも身を投じてみてはいかがだろうか。
『魔性の子 十二国記』小野 不由美著(新潮文庫)
『丕緒の鳥 十二国記』小野 不由美著(新潮文庫)
文/わにわに