映画『アメリカン・スナイパー』がさらに面白くなる!注目したい3つのポイントとは?
※画像はスクリーンショットです。
先月、日本で『アメリカン・スナイパー』が公開されました。監督は『硫黄島からの手紙』『ミリオンダラー・ベイビーズ』といった著名作を数多く手がけたクリント・イーストウッド。さらに主演は、『世界に一つのプレイブック』『アメリカン・ハッスル』でアカデミー賞にノミネートされたブラッドリー・クーパー。
監督と主演だけでも話題性たっぷりの『アメリカン・スナイパー』ですが、本作品はもう1つの理由から国内外問わず注目されているのです。
■あらすじ、背景の紹介
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映画『アメリカン・スナイパー』はイラク戦争に4回にわたり従軍したアメリカの狙撃手、クリス・カイルの生涯を描いた作品で、彼の自伝『ネイビー・シールズ 最強の狙撃手』を原作としています。
本作の主人公であるカイルは25歳でアメリカ海軍に入隊。その秀でた射撃の腕前から徐々に軍内で頭角を表していきます。私生活ではタヤという女性と結婚し円満な家庭を築こうとするのですが、その矢先にイラク戦争が勃発。カイルは4度にわたる従軍中に、160人以上を射殺しています。
米軍除隊後、PTSDに苦しむ帰還兵の社会復帰を支援していたカイルでしたが、2013年に射殺されてしまいます。犯人はPTSDを患った元兵士。事件当時、カイルは元兵士の母親の依頼で射撃訓練に付き合っていました。
カイルを射殺した元兵士の裁判は今年の2月に行われ、最終的に「仮釈放なしの終身刑」が言い渡されました。アメリカで『アメリカン・スナイパー』が公開されたのは1月16日。時期的に近かったことから、本作はたちまち話題作になりました。
■「アメリカン・スナイパー」のココに注目して観てほしい!
さて、ここからが本題。今回は、『アメリカン・スナイパー』をこれから観る方にはぜひ注目してほしい3ポイントをご紹介します。ストーリーに関わるネタバレはないのでご安心ください。
①イラク側が使用している銃と車
まず紹介したいのは、劇中のイラク兵の銃はすべてロシア製であり、自動車は日本製ということ。
イラクの武装勢力が使用している銃はAK-47という、1949年にロシアで採用された歩兵用のアサルトライフルです。
AK-47は高い耐久性をもち、砂漠などの劣悪な環境でも容易に整備できるのが特徴。最初の登場から50年以上経った現在でも世界の紛争地域で使われ続けており、「世界で一番多くの人を殺した兵器」とまで言われます。
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また、劇中でイラク兵が乗る自動車は、なんとトヨタや三菱などの日本車。実際、日本車は信頼性が高く壊れにくいと評判であるため、実戦やテロリストの間で用いられることが少なくないそうです。
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②カイル氏の周りで頻繁に見られる「ドクロマーク」
皆さん、このキャラクターはご存知ですか?これは、アメリカの漫画に登場するヒーロー「パニッシャー」です。
カイルは、「パニッシャー」のトレードマークであるドクロを愛用していました。
この「パニッシャー」、他のスーパーヒーローよりも冷酷非道であることで有名で、法律やモラルに構わず犯罪者を容赦無く処刑する、所謂「ダークヒーロー」の立ち位置をとっています。
「パニッシャー」ことフランク・キャッスルが、元はアメリカ海兵隊員であり、ベトナム戦争では最前線で戦った過去をもつ設定は、4回にわたってイラク戦争に従軍し計160人以上を射殺したカイルと重なる部分があります。
劇中では「パニッシャー」のドクロマークが何度も登場します。従軍の回数を重ねるごとにドクロマークが登場する頻度も増えます。車や兵士の服装などに注目しておいてください。
ちなみに、カイルの仲間ビグルスが読んでいる本はよく見ると「パニッシャー」(「PUNISHER」というロゴが見えます)。
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③羊・オオカミ・番犬の教え
『アメリカン・スナイパー』は、カイルの少年時代についても触れています。本作の序盤でカイルの父親が、まだ幼いカイルと彼の兄弟に
「この世には3種類の人間がいる。それは羊、オオカミ、羊を守る番犬だ」
と説くシーンがあります。
カイルの父親曰く、
「一部の人間は、世界は平和だと思い込んでいる。危険が自分の近くに忍び寄ってきたとき、彼らは自分を守る術を知らない。それが羊だ。
また、弱者を暴力をもって支配しようとする者もいる。それがオオカミだ。
そして、羊の群れを守るために必要な才能を神から授けられた者もいる。彼らはオオカミに立ち向かうために生きる。それが番犬だ」
カイルは類まれなる射撃の才能で精鋭部隊の中でも頭角を表していき、イラク戦争では仲間に攻撃しようと銃を構える人間を老若男女関係なく射殺していきます。彼は父親の教えに従って“番犬”としてやるべき事を遂行しようと奮闘するのです。
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しかし、武器を手に持っただけの子供にも発砲しなければいけないのか?
守ることが出来ず、目の前で銃撃を受けた仲間に対し何と言えばいいのか?
……このような、相反する感情を抱えながら、カイルは出兵を重ねます。幼少時代のカイルが父親から受ける教示に注目した上で本作の鑑賞に臨めば、よりカイル氏の苦悩が浮き彫りになるでしょう。
以上の3ポイントに着目しながら本作を観るとさらに面白くなるはずです!
最後にもう1点だけ。これから『アメリカン・スナイパー』を観ようと思っている方は、エンドロールが終わるまで席を立たないことをお勧めします。すでにご存知の方もいるかもしれませんが、本作のエンドロールは他の映画にはない「ある工夫」がされています。
カイルに対する監督の祈りなのか、観客に本作のメッセージについて考えてほしかったのか……。戦争の存在をテレビ越しでしか感じることがない私たちに、本作のエンドロールは深い余韻を残します。
公開から1カ月が経ちましたがまだ全国の劇場で上映中です。まだ観ていない方はぜひ劇場へ。