気軽に読める名作ぞろい! 大学生のうちに読んでおきたいフランス文学(入門編)
『星の王子様』に『レ・ミゼラブル』。よく耳にするフランス文学ですよね。
ですが、この他にフランス文学の名作ってご存知ですか? 世界史選択だった方ならいくつか作品名が思い浮かぶかもしれませんが、実際に読んでみたことは?と聞かれると、頷く方は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、1冊完結で気軽に読みやすいフランスの名作文学を3つ紹介します。
■あのドラマの原作にも登場! サガン『悲しみよ こんにちは』
まず紹介するのは、フワンソワーズ・サガンの処女作『悲しみよ こんにちは』。長さは200ページもありません。
主人公セシルがプレイボーイな父とその愛人エルザと共にバカンスを楽しんでいたところに、亡き母の友人で美しく聡明なアンヌが訪れ、父と結婚することに。
セシルはアンヌに勉強を強要され、青年シリルの恋仲も邪魔されます。そこで、セシルは父とアンヌの結婚を妨害しようと、エルザとシリルを巻き込んで計画を立てますが……。
あらすじはこんな感じ。大人に対する反発や恋愛に関する考え方など、18歳の少女の葛藤がリアルに描写されています。共感したり、あるいは「高校生のとき、こんなこと思っていたなぁ」なんて懐かしくなったりするかもしれません。
ちなみに、以前話題を呼んだドラマ『1リットルの涙』の原作『1リットルの涙―難病と闘い続ける少女亜也の日記』(木藤亜也著/ 幻冬舎文庫)に、主人公が『悲しみよ こんにちは』を読む場面があります。
『悲しみよ こんにちは』を知っていると、より楽しめるかもしれませんね。
●『悲しみよ こんにちは』 (新潮文庫)
■オペラやバレエの作品にも! デュマ・フィス『椿姫』
(Photo by Rictor Norton & David Allen)
『モンテ・クリスト伯』『三銃士』といった名作を著したアレクサンドル・デュマの息子、デュマ・フィス。ちなみに、フランス語でフィス(fils)は「息子」という意味。
そんなデュマ・フィスの『椿姫』のストーリーは以下のとおり。
1ヶ月の内25日は白い椿を、残り5日は赤い椿を身につけていたことから「椿姫」と呼ばれた美しい高級娼婦マルグリット。彼女は歓楽の生活に明け暮れ、心身ともに疲れ切っていました。
そんなとき、青年アルマンの素直で誠実な愛に触れ、2人はしだいに親密になっていきます。
2人は幸せな日々を送りますが、「息子が娼婦に入れあげている」と聞きつけたアルマンの父がやってきます。父はマルグリットにアルマンと別れるよう迫ります。
真実の愛を知ったマルグリットが、自分の恋心を捨ててでも愛する相手のことを思い慕う様子に心打たれる名作。300ページほどありますが、2人の愛の行く末が気になって最後まで一気に読みたくなること請け合い。
椿の花言葉は「控えめな優しさ」「誇り」。真実の愛を貫くマルグリットの姿はまさに花言葉そのもののよう。
●『椿姫』 (新潮文庫)
■独特の挿絵とストーリーに注目! コクトー『恐るべき子供たち』
最後はジャン・コクトーの『恐るべき子供たち』。長さは250ページほどですが、ストーリーが独特で先の展開が気になり、一気に読めてしまうかも。
物語は熾烈な雪合戦のシーンから始まります。そこで異彩を放つ、美しく英雄的なダルジュロス。主人公のひとりポールはこのダルジュロスに愛情のような感情を抱いています。
しかし、ダルジュロスの投げた雪玉がポールの口と胸元に当たり、ポールは病気になって学校を辞めることに。
その後ポールの母が死に、ポールは姉のエリザベートと共に孤児に。それから、ポールのか弱さを愛する少年ジェラール、ダルジュロスにそっくりの少女アガートが姉弟の部屋に入り浸り……。
主人公はポール、ポールの姉エリザベート、ポールを愛するジェラール、少女アガートの4人の子供たち。彼らの互いへの愛情には、狂気すら感じるかもしれません。ラストシーンでは、タイトル通り” les enfants terribles(恐るべき子供たち)”と感じることでしょう。
この作品には挿絵がたくさん入っていますが、これは作者コクトー自身が描いたもの。独特のタッチも楽しみのひとつです。
●『恐るべき子供たち』(光文社古典新訳文庫)
いかがでしたか?どれも名作と言われ、読みやすいものばかりです。ぜひ暖かな日差しの下、お気に入りの場所で読んで、ちょっぴりおしゃれな気分になってみてください。