【技術の結晶】出版業界を支える「印刷」「製本」の舞台ウラに迫る!
東京・浮間舟渡にある日経印刷株式会社の工場「グラフィックガーデン」。今回Gaku-yomu編集部は、出版業界を支える大きな柱である「印刷」「製本」の現場を取材するためグラフィックガーデンを訪れた。
全面ガラス張りの美しい外観のこの工場、実は『相棒』『家族ゲーム』『ウロボロス』など数々のテレビドラマのロケ地としても活躍しているそうだ。俳優のサイン色紙がいくつも飾られている。
■まずは製版工程
ここが印刷の出発点。発注元から入稿された印刷物のデータの形式を整えて、「版」を作成する。
▲製版機で版が作られている様子。表面には感光剤が塗られており、現像するとインクを乗せる部分は親油性、それ以外の部分は親水性の性質をもつようになる。現在主流のオフセット印刷では、この違いを利用して印刷するのだ。
■印刷工程
そしていよいよ印刷工程。ここで使われていたのは巨大な印刷機だった。
この機械のなかで何が行われているのか。日経印刷の社員の方が丁寧に解説してくださった。
「印刷機の奥に山のようなものが4つ、間を空けて、手前にもう4つあります。それぞれの山にはCMYK※のインクが充填されています。
ここに紙を通すと、奥の4つの山で片面の印刷をして、間で裏返して、手前の4つの山でもう一方の面を印刷します。そうして両面がカラーで印刷されて出てきます」
CMYK・・・シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のこと。一般的な印刷ではこの4種類の色を使ってすべての色を表現する。
体育館のように広いスペースに大きな印刷機が何台も並んでいるが、通路はしっかり確保されていて歩き回るのに困ることはない。また、管理の行き届いた工場内はどこを見てもきれいに整理整頓されている。
■製本工程
次は製本工程。印刷機から出てきた本の中身が組み合わさり、本の形が見えてくる。
「本の本文は、複数のページが大きな1枚の紙に印刷され、それを3回折ると16ページの塊ができあがります。これをたくさん積み重ねて表紙を巻いて3辺を裁断すると1冊の本になります」
▲バラバラになっている本の中身を、機械が高速でひとつひとつ積み重ねていく。できあがったら背中に糊がつけられ、表紙が巻かれる。
▲ここで3辺を裁断される。こうしてすべてのページが分かれて、ついに本が完成する。
製版から製本まで、機械化された製造ラインで一冊ずつ仕上げられていく本の数々。さまざまな技術を結集して高度に効率化された「本づくりの現場」が今日の出版業界を力強く支えている。
■グラフィックガーデンから生まれた本
1階のロビーには日経印刷で生まれた本が何冊も展示されている。
なかには多くの受験生がお世話になる『速読英単語』(Z会)やベストセラー『いつかは行きたい 一生に一度だけの旅 BEST500』(日経ナショナルジオグラフィック社)なども。各省庁の「白書」もこの工場で作られているのだそうだ。
今回取り上げたのは、グラフィックガーデンの作業の一場面。インクの調合、ポスターの印刷と裁断、表紙のツヤ加工、中綴じ製本、カバーや帯の取り付けなど、ここでは紹介できなかったシーンが少なくない。
グラフィックガーデンでは定期的に工場見学を開催しているとのことなので、機会があれば参加してみてはいかがだろうか。今回取り上げられなかった印刷の工程も丁寧な説明とともに見せてもらえるはず。
詳しくは日経印刷株式会社ホームページから見ることができる。
(提供:日経印刷株式会社)