注目の映画『イマジン』―光と音が巧みに描く、盲目の世界とほのかな恋
※画像はスクリーンショットです。
4月25日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムで上映されている映画『イマジン』。
2012年ワルシャワ国際映画祭で監督賞・観客賞を受賞、2013年グディニャ国際映画祭・2014年ポーランド映画賞で音響賞を受賞するという快挙を成し遂げた、注目の作品です。
この『イマジン』、ストーリーを映像として「見る」面白さもさることながら、背景に流れる音の数々を「聞く」のがまた面白いのです。ここでは、この2つの面白さを紹介していきます。
■あらすじ
リスボンにある視覚障害者のための診療所に訪れたひとりの盲目の男・イアン。彼は診療所にいる盲目の子供たちに「反響定位(エコーロケーション)※」を教えるために来たインストラクターでした。
※反響定位(エコーロケーション)・・・音の反響を感じ取り、身の回りの状況を察知すること。イルカやクジラなら超音波を発する、人間なら指や舌を鳴らすことでその反響を耳で受け止める。
初めは不審がっていた子供たちも、反響定位を使って杖なしで歩くイアンの授業に、次第に熱心に取り組むようになります。
イアンの住む部屋の隣に住むのは、外国からやって来た盲目の成人女性・エヴァ。彼女はそれまで、誰とも話をせずに自室に閉じこもっていましたが、しだいにイアンの授業を見に来るように。
そしてついに、2人は杖を持たずに街へ。しかし、イアンの指導は危険とされ、診療所から解雇通告を受けてしまいます。
■淡い恋愛、自然光を駆使した映像美——「見る」面白さ
※画像はスクリーンショットです。
主人公2人の淡い恋愛
主人公は教師イアンと隣人エヴァ。ストーリーの中でこの2人の恋愛感情が具体的に描かれることはありません。しかし、映画の各所に惹かれ合う2人の思いが垣間見えてきます。
特に、イアンが車に轢かれそうになるエヴァを引き寄せ、抱きしめるシーンは必見。そして最後には、ロマンティックでありながら味わい深いラストシーンの余韻があなたの胸いっぱいに広がるはず。
いわゆる「恋愛モノ」の甘い雰囲気とは違った、静かなときめきがあります。
自然光を活かした映像美
※画像はスクリーンショットです。
本作は徹底して「自然光」を用いて描かれています。
主な舞台である診療所には、視覚障害者が生活する施設だからか電灯はほとんどありません。彼らは日中は太陽に、夜は月明かりに照らされながら暮らしています。
しかし、盲目の登場人物たちには診療所の薄暗さや太陽のまぶしさを感じることはできません。映画を「見て」いる私たちには太陽に明るく照らし出されたリスボンの美しい街並みや子供たちの笑顔が見えているのに、登場人物たちにそれが見えていない。
自然光を活かした本作の映像描写は、対比的に「登場人物たちの生きる真っ暗な世界」を表現しているのではないでしょうか。
■目が見えない世界の音——「聞く」面白さ
※画像はスクリーンショットです。
この映画を観ていると、映像を追いながらも耳に神経を集中させてしまうことがあります。靴音、車の音、部屋に反響する声……。全ての音が、耳の奥まで深く響くよう。でも、うるさいといった感じは受けないのです。
アンジェイ・ヤキモフスキ監督は、映像に自然光を駆使することと同時に、深く響き渡る音響設計に力を入れて制作したそう。
上映中、一度目を閉じてみてください。耳に響く研ぎすまされた音は、あたかも盲目の登場人物たちが世界を感じ取ろうと必死に聞いている音のように感じられるはず。
ちなみに、音声ガイド付き上映も毎日ではありませんが行なっているので、目の不自由な方も鑑賞しやすくなっています。
気になった方は、ぜひ観に行ってみてはいかがでしょうか。鑑賞後、いつも見ている景色がちょっと違って見えるかもしれません。
『イマジン』オフィシャルサイト
http://mermaidfilms.co.jp/imagine/
渋谷シアター・イメージフォーラム
http://www.imageforum.co.jp/theatre/index.html