【日経新聞を読み解くコトバ】異次元緩和の「2%インフレ目標」とは?
日経新聞をスラスラ読めるようになりたい。
そんな学生のために、慶応商学部で学ぶ現役大学生が週1で図書館にこもって文献を漁り、「よく聞くけど意味は知らない経済・金融用語」を自分の言葉でふわっと解説するコーナーです。
前回は日銀の「異次元緩和は何が“異次元”なのか」を解説しました。
今回取り上げるコトバは「2%インフレ目標」。異次元緩和の達成目標として掲げられている重要なキーワードです。
■インフレ目標って?
どんな金融政策を行うにも、その効果を測るための「指標」が必要です。受験生が自分の点数や偏差値を上げることを目標に勉強するように、日銀も何かの指標を掲げて政策を立てなければなりません。
そこで今回、異次元緩和の効果を測る指標として注目されたのが、インフレ率(物価の前年度比上昇率)でした。
日銀は異次元緩和に取り組むにあたって、「2%のインフレ目標」を掲げています。つまり、物価を前年度比で2%上昇させるのが異次元緩和のゴールなのです。
■物価を上げる目的
では、そもそも日銀はどうして物価を上げようとしているのでしょうか。それは「日本経済を長く停滞させた『デフレ・スパイラル』から脱却し、経済成長を実現するため」です。
1990年代前半にバブルが崩壊してから最近に至るまで、日本は止まらないデフレの連鎖に襲われました。よく「失われた20年」と呼ばれる長い停滞期です。
デフレとは、「物価が持続的に下がっていく経済現象」のこと。「物価が下がるんだったらモノが安くで変えてむしろ良いじゃないか」と思われがちですが、実はそうでもありません。
デフレはさらなるデフレを呼び、経済の流れをせき止めてしまうのです。
デフレ・スパイラルの「負の連鎖」
デフレがデフレを呼ぶ負の連鎖は「デフレ・スパイラル」と呼ばれます。
まず物価が下がる(商品を安くでしか買ってもらえなくなる)と、企業の収益が減ってしまいます。
すると企業の経営者としては、設備投資を抑えたり人件費を削減したりしてどうにか収益を守らなければなりません。
こうして起こるのが「賃金カット」や「派遣切り」。当然、消費者の家計が苦しくなります。
そして収入が減った消費者は消費を抑えるようになり、企業はさらに価格を下げないとモノが売れなくなるのです。
その結果、さらに物価が下がる。そしてそれはさらなる企業の減益・消費の減退を招き、ますます物価が下がっていく…。これが「デフレ・スパイラル」です。
日本経済はこのデフレ・スパイラルに陥り、長期の停滞に見舞われたと言われています。だからこそ、安倍政権のアベノミクスでは「デフレ脱却」が大きな課題として掲げられました。
アベノミクスに呼応する形で、日銀は「2%インフレ目標を2年で達成する」と宣言して異次元緩和に乗り出しました(異次元緩和の詳しい内容は前回「『異次元緩和』って何が“異次元”なの?」を参照)。
■2%インフレ目標は達成できているの?
株価は日経平均2万円に達し、「失われた20年の終わり」が叫ばれる現在ですが、「2%インフレ目標」の達成現状はどうなっているのでしょうか。
実は、あまり良くありません。
当初、円安と株高のおかげで1.7%まで上昇したインフレ率でしたが、その後下降の一途をたどり2015年2月には0%まで低下。
日銀はこの事態を認めており、2%達成時期を「平成27年度を中心とする期間」から「28年度前半ごろ」に後ずれさせました。
インフレ率の低下を受け、国際通貨基金(IMF)は日銀に対し追加緩和を促しています。今後、日銀はどう対応していくのでしょうか。
さて、次回は「ギリシアはいったい何が金融危機なのか」を取り上げることにしましょう。