本を片手に飲みたい!文学的カクテルの楽しみ方。
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カクテルの楽しみ方は、人それぞれ。味にこだわったり、見た目がきれいなものを選んだり、度数の強いものに挑戦してみたり、名前のカッコよさだけで決めてみたり。
今回は、「文学に絡める」という切り口から、一味違ったカクテルの楽しみ方をご紹介します。
雪国
サントリーが主催するカクテルコンクールで優勝した、日本人が考案したカクテルです。名前そのまま、川端康成の「雪国」に由来しています。
グラスの縁にまぶされた砂糖が、国境の長いトンネルを抜けた瞬間視界に飛び込む雪の白さを連想させます。材料は、ホワイトキュラソー、ウォッカ、ライムジュース。そこにグリーン・チェリーが沈められています。
雪国の温泉町での、無為徒食の暮らしをする島村と芸者駒子の出会い。甘くさわやかな口当たりながら25度というアルコール度数の高さは、駒子の美しさと島村への情熱を思わせます。
モヒート
居酒屋で取り扱っているところも多いので、知っている人も多いはず。
モヒートは、文豪ヘミングウェイが愛したカクテルとしても有名です。ヘミングウェイは酒豪としても知られており、彼が生涯のうち22年間を過ごしたキューバでは足繁くバーに通っていました。彼が常連だったバーは現在でも観光スポットして賑わっているようです。
シェイカーなしで作れるので、自宅でもチャレンジしやすいという意味でも人気のカクテルです。ミントの爽やかさは、暑い夏にもぴったりです。
ギムレット
「I suppose it’s a bit too early for a gimlet.(ギムレットには早すぎる)」
この台詞だけ聞いたことがあるという人もいるかもしれません。
アメリカのハードボイルド作家、レイモンド・チャンドラーの推理小説「長いお別れ」の名台詞です。
私立探偵マーロウは、友人レノックスにメキシコへ逃れる手助けをしてほしいと頼まれます。彼の無実を信じ、マーロウは逃亡の手助けをするのですが、結局レノックスは妻を殺したと告白しマーロウへの手紙を残し死んでしまいます。しかし、別の事件を追ううちに物語は意外な展開を見せるのです。
ギムレットは、レノックスが好きなカクテル。本来ギムレットは、ジンとコーディアルライム(甘みをつけたライム・ジュース)を3:1でシェークして作る辛口のカクテルです。しかし、レノックスが好きなのは「ジンとローズのライム・ジュースを半分ずつ」。ローズ社のライム・ジュースは他のものより甘く作られているので、レノックスが好きなギムレットはかなり甘いのだとか。
物語の重大な鍵を握っている台詞ですので、この台詞の真意は実際に本を読んでみてください。
カクテル片手に読む本は、また違った景色を見せてくれるかもしれません。
カクテル提供/慶應義塾大学カクテルサークル「COSMOPOLITAN SHAKER」
慶應唯一の国際系カクテルサークル。大学学年学部国籍を問わず様々なメンバーが所属し、週1~2回ノンアルコール/通常カクテル会を行っている。
文/古今日子