【取材】早稲田大学探検部は想像以上に本格的だった
夏休み。サークル仲間や友人同士で登山したり、川辺でBBQをしたりして非日常を楽しむ学生が多い季節になりました。
そんな中、誰よりも真面目に「探検」に勤しむ部活がありました。早稲田大学探検部です。
大学生で構成された「探検部」と聞くと、男女混合でわいわいキャンプをしたり、ときに海で魚を釣ったりするような楽しそうな印象をもってしまいがちです。……が、今回取材した早稲田大学探検部は、そんなイメージを一気に払拭するほどの「真面目さ」も兼ね備えていました。
早稲田大学探検部は普段何をしているのか?「探検」とは何なのか?早稲田大学探検部部長・細貝悠さん(3年)にお話を伺いました。
▲探検部の部室。探検先で購入したマスクや置物が所狭しと飾ってあります。棚には、50年以上の歴史がある探検部の記録がぎっしりと詰まっていました。
新種の鳥の住処を探しに、カンボジアへ……「探検部」普段の活動とは?
―では、早稲田大学探検部の活動について教えて下さい。
国内での探検をしますが、一番の目標は「海外での探検」です。最近は東南アジアが多いですね。
今年の3月はカンボジアに行って、新種の鳥「カンボジアサイホウチョウ」の巣を見つけようとしました。字のごとく、葉を編んで巣をつくる鳥です。サイホウチョウにも色々種類があって、中でもカンボジアに住んでいるものが新種として学会で発表されたのですが、その巣がまだ見つかっていないということだったので。それを見つければ、「探検」に繋がるのかなあと思いました。
▲「サイホウチョウ」の様子。全長11-13cmの小さな鳥。(Photo by Melvin Yap)
―部員は何人いるのですか?
部員は大体20人で、女子は6-7人かな。毎週火曜日に部会をするのですが、部会に参加しないやつは部員だと思っていません。
―部会では何をするのですか?
部会では、週末や次の休暇で行く探検のための計画を審議します。探検に行く前は必ず計画書を作って、安全対策などを練ります。だから、部会には絶対に参加する必要があります。特に海外へ探検に行くときは、6回以上審議を重ねます。
そう言って細貝さんが見せてくれた探検部の計画書は分厚く、重量感がありました。計画書は何十枚ものA4紙をホッチキスで束ねてあり、最初のページには目次があるほどの徹底ぶり。「探検」に行く前にどれほど前調べをしているのかが伝わりました。細貝さんの話す様子があまりにも探検慣れしていたので、小さい頃から未開の地に親しんでいたと思いきや……。
「探検部」とアウトドアサークルは違う!
―細貝さんは、中高のときから頻繁に探検されていたのですか?
いえ、そんなことはないですよ(笑)。ここ(探検部)に入る人は、みんな初心者です。
―では、入部してからコツコツ経験を積んで、探検の術を後輩に伝授していくんですね。
術というか、1年生には「探検とは何か」を考えさせるのを大事にしています。探検部って、色々行けて「楽しい」アウトドアクラブと思われがちなんですよね。でも、それとは一線を画したくて。また、安全対策も大切だけど、個人的に探検する目標を考えるのも重要だと思います。何の為にそこに行くのか、そこで何を得たいか、など。
▲部員が探検し見つけた珍しい蘭。探検部は地理的な探検に限らず、面白い植物を探す探検もしています。
探検部が初心者におすすめする「探検スポット」とは
―この夏、私のような探検初心者が「探検」に行く場所として、どこがおすすめですか。
奥多摩にある「ちょうちん穴」ですね。僕たちもよく行きます。
ちょうちん穴は、二つの洞窟が細い穴を通じて繋がっているんです。第一道から第二道に抜けることもできますが、初心者は第一道に入って、第一道から抜けるのをおすすめします。本当に穴が狭いので。うまく体を使えば抜けられるんですけど、抜けるのは難しいですよ。観光用の洞窟とは違って、狭くて、じめじめしていて、泥んこまみれになるにはいいかもしれません。
▲探検部が洞窟で探検をしている様子。
提灯穴 公式HP: http://www.tozai-trek.com/ja/2011/10/kawanori-cave/
※「ちょうちん穴」に入るのに許可、お金は必要ありません。ただ、現地について事前に調べること(適切な服装、必要な持ち物など)は絶対条件です。
体力に自信がない人におすすめ?もう一つの「探検気分」を味わう方法
―洞窟の他に、何かおすすめの「探検」はありますか。
あとは……虫とか食えばいいんじゃないですか(笑)。
―虫ですか!?
今年の新歓は、虫を食べに六道山公園(東京都武蔵村山市)にも行きました。いつか、世界は人口爆発によって食糧危機がくるだろうと思ったんです。それに備えて、今の内に何が食べられて何が食べられないのか、何をどう調理したら美味しいのかを調べようと思ったんです。
新歓の時期だったので大きい虫が全然いなくて、小さいコクワガタやチョウ、クモしかいなかったです。全部油で揚げて食べたので、揚げ玉みたいな味がしました。
―どの虫が美味しかったですか。
まずわかったのは、クワガタなどの甲虫類は不味い、ということです。堅いし、なんか苦いです。その反面、クモやミノムシ系はイケましたね。
▲探検部が今年の新歓で食べた虫たち。
六道山公園 公式HP:http://www.sayamaparks.com/noyama/
―では、この夏初心者が探検に行く場所として「ちょうちん穴」と「虫食い」がおすすめなのですね。
そうですね。沢登りもありますけど……かなり危険なので、各自「沢登り 初心者 準備」でググってほしいですね。
―初心者が探検に行く上で安全対策や事前調査が必要不可欠なのはわかりましたが、それに加えて、探検するときに持っていくといいグッズなどはありますか。
探検中にパニックになるのは危険なので、何か落ち着くものを持っていくといいですね。僕は昔から使っているナイフを探検するときに持っていくようにしています。部員の中には、いつもお気に入りの紅茶を持っていく人もいます。
最後に
―さっきからずっと気になっていたんですけど、(細貝さんの後ろにある)お面とかホルマリン漬けされている蛇が凄い存在感ですね。
そうですね、探検部員がどっか行ったときに持ってきたものが多いですね。このお面は……多分日本のものですね。
―日本のものなんですか!?
まあちょっとモチーフが変なんですけど、日本の一部の村って男根思想があるんで……まあ入ったときからあるので、よくわからないです。
―なるほど……。
気になった方は、来年の新歓で足を運んでみてはいかがでしょうか。
「旅行」は観光だけど、「探検」は観光地化されていない地へ行く。だから、安全対策は絶対に必要です。……そう話す細貝さんの言葉が印象的でした。「探検」と「旅行」を明確に区別し、事前調査を怠らない。想像以上に真面目に活動に取り組んでいた「探検部」の姿勢に、尊敬の念を覚えました。
取材・文/城見島ほのか