【取材】渋谷駅から徒歩7分「森の図書室」のオーナーと話してきた
渋谷駅から徒歩7分の場所に、「図書室」があることを知っていますか?
都会の喧騒から離れて、お酒を楽しみながら本を読める。「森の図書室」は、本好きの夢と理想を凝縮したような空間です。
2014年6月にオープンしたばかりの「森の図書室」は、クラウドファンディングで国内史上最多の1737人の支援を受けてつくられました。支援額は最終的に953万円になったとか。先々月は『アメトーーク』で取り上げられるなど、現在注目が集まっている図書室の一つです。
今回は「森の図書室」にお邪魔して、オーナーであり図書委員長でもある森さんにお話を伺いました。
早速、中に入ってみた
予想はしていたものの、中に入った瞬間目に入るのは本、本、本。
店内は細長く奥行のある構造になっていて、壁沿いにずらりと本が並んでいます。
本棚に陳列してある本のジャンルはバラバラ。有川浩の『図書館戦争』の隣にコナー・ウッドマンの『フェアトレードのおかしな真実』が置かれていたり、純文学作品が何冊か続いてから突如、橙乃ままれの『まおゆう魔王勇者』シリーズが現れたり……。来るたびに常に新しい発見がありそうな棚ばかりです。
中には「森の図書室」のお客さんが好きな本も置いてあるとか。
森さんにいろいろ訊いてみた
早速、オーナーの森さんにお話を伺いました。森さんは小さい頃から本を沢山読まれているということで、手始めに訊いた質問はこれ。
――学生におすすめしたい本はありますか?
森さん:……正直、特にないですね。本に年齢とか関係ないと思います。
まさかの回答に驚きを隠せませんでした。森さん曰く,
森さん:よくお客さんにも「おすすめの本教えてください」と言われるんですけど、何を薦めればいいのかわからないんですよね。選んだはいいけど、その人にとって微妙だったら申し訳ない。お客さんには、お客さん自身が気になった本を選んでほしいです。
とのこと。確かに一理あるのですが、それだけだとインタビューが終わってしまうので、本に関する質問をもう少し投げかけてみました。
――では、学生向けの本ってありますか?読みやすい、みたいな。
森さん:朝井リョウさんのエッセイ『学生はやらなくていい20のこと』ですね。とにかく笑えて、下らないんですよ。軽い文体だし、これは読みやすいと思います。
(画像は楽天ブックスより)
小説『桐島、部活やめるってよ』『何者』で有名な朝井リョウさん。平成生まれの作家だからでしょうか、今を生きる若者の描写が適格です。『学生はやらなくていい20のこと』では、小説では見られない朝井さんの側面も味わえそうです。
森さん:あとは……『早稲女、女、男』ですね。青山や立教、早慶の女子大生が主人公なんです。それぞれの視点によって大学の個性が出ていて。大学生が読んだら面白いんじゃないかなあと思います。
――「女、男」ってことは、恋愛要素もあるんですか?あと、これって文庫化もされているのでしょうか?
森さん:そうですね、恋愛要素もありますよ。文庫化はされてないですね……Amazonでは200円から中古で売られていますけど(笑)
(画像は楽天ブックスより)
同じ年齢なのに、通う大学が違うだけでなぜこうも学生の纏う雰囲気が変わるのでしょうか。この本を読めば何となく各大学に対する凝り固まったイメージが解かれそうな気がします。
――では、学生が読んでためになる本ってありますか?
森さん:『ネット・バカ』。これですね。
そう言って森さんが取り出したのは、コースター。よく見ると、そのうちの一枚に「ネット・バカ」と書いてありました。
森さん:読んでためになる本というか、本を読む前に読んでほしい本ですね。本を読むってこういうことなんだってわかります。今ってネットで何でも検索できてしまう時代ですけど、ネットと本の区別がついていることって大事だと思います。それが明確にわかる本ですね。分厚いけど、読みやすい「真面目系」な本ですよ。
(画像はAmazonより)
森さん:『会社は頭から腐る』っていう冨山和彦さんが書いた本もあるけど、学生が読む本ではないかもなあ。ビジネス本だから。
――ところでこのコースターって、何種類あるんですか?
森さん:えーっと、全部で6種類かな。
森さんの学生時代の先輩がデザインした、お洒落なコースター。表面にはタイトル、裏面には森さんの感想が書いてあります。
――あ、辻村深月さんの『僕のメジャースプーン』ですね!
森さん:そうです。小学生の男の子が主人公で、すごい優しい話なんです。辻村さんだったら『スロウハイツの神様』『島は僕らと』『本日は大安なり』も好きですね。
(画像はAmazonより)
辻村深月さんは『太陽の坐る場所』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』の「女性のドロドロした人間関係」を如実に描く作家さんという印象があったので、ぜひ『僕のメジャースプーン』を読んで爽やかな読了感を味わいたいと思いました。
森さん:あとは、宮木あや子の『花宵道中』がすごく好きです。めちゃめちゃ面白いですね。文庫化もされてますよ。
(画像はAmazonより)
他にも、FUKUDA(W)と志賀渡の『消しゴムをくれた女子を好きになった』、映画『スラムドッグ・ミリオネア』の原作にもなったヴィカス・スワラップの『僕と1ルピーの神様』が面白かったそうです。
最後のコースターに書かれていたのは、これ。
米原万里の『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』
(画像はAmazonより)
――『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』、読みました。政治や歴史の知識が皆無だった中学生のときに読んだので、わからない箇所も多かったです。
森さん:これ良い本ですよね。これを読んで気になって調べる、っていうのもアリだと思いますよ。
――去年夏文庫フェアで取り上げられてましたよね。
森さん:毎年あの夏文庫フェアを見る度に「この夏は100冊読みたい!」って思います、無理ですけど(笑) 。学生だったら、夏休み100冊とかいけるんじゃないですか?
森さんとお話していて改めて実感したのは、学生は自由な時間があり余っているということ。夏休みも終わりに近づいていますが、その気になれば何冊でも読めてしまいそうです。
「本を読んでると睡魔が……」という方は、少し場所を変えてみて「森の図書室」に足を運んでみてはいかがでしょうか。今年は「読書の秋」にしたい!と感じること請け合いです。
【森の図書室】
▪開店時間
平日・土日・祝日
(お昼 13:00頃 – 17:00 夜 18:00頃- 25:00)
不定休