ポップでファンキーな青春物語!一気読み間違いなしの『ゾンビーズシリーズ』
まだまだ暑い夏が続きますね。そんな暑さを吹き飛ばす、痛快で爽快な物語『ゾンビーズシリーズ』をご紹介します。念のため言っておきますと、ゾンビは一体も出てきません。堅苦しい本は苦手、という方にもおすすめです。もちろん、ホラー小説はNGなあなたにも。読み始めれば、軽妙な語り口にぐいぐい引き込まれていくこと間違いありません。
新宿の典型的オチコボレ男子高に通う生徒は、周囲から「ゾンビ」と呼ばれています。理由は「殺しても死にそうにないから」(一説には「偏差値が脳死レベルだから」とも)。彼らは近所の女子高の学園祭に潜り込むために、「ザ・ゾンビーズ」というグループを結成します 。ザ・ゾンビーズは自らトラブルに首を突っ込み、そして鮮やかに去っていきます。
学園祭を襲撃せよ!『レヴォリューションNO.3』(金城一紀著/角川書店)
シリーズ第一弾で、短編3つの構成です。ある日、生物教師のドクター・モローは言いました。「君たち、世界を変えてみたくはないか?」と。そして、勉強の得意な女の遺伝子を獲得して階級社会に風穴を開けるには努力するしかない、と説きます。そこで生徒たちがたどり着いた答えは、女子校の学園祭に潜り込むことでした。主人公の「僕」 は「見た目が頭良さそう」という理由から女子校学園祭襲撃作戦の作戦立案係に任命されます。果たして彼らの学園祭襲撃は成功するのか、その行方をぜひ目撃してください。作戦自体はアホですが、それだけじゃなくて、ちょっぴり泣けてしまいます。
娘のために、自分のために、立ち上がれ!『フライ、ダディ、フライ』(金城一紀著/角川書店)
『フライ、ダディ、フライ』(金城一紀/角川文庫) (画像は楽天ブックスより)
シリーズ第二弾の長編。なんと、主人公は47歳の平凡なサラリーマン。でも青春なんです。不思議でしょう?娘を殴った男と闘うために、お父さんがザ・ゾンビーズとともに頑張ります。一人の男が生まれ変わる中で、家族愛が紡がれてゆきます。
心が納得しなかったら、とりあえず闘ってみろ。『SPEED』(金城一紀著/角川書店)
『SPEED』(金城一紀/角川文庫)(画像は楽天ブックスより)
シリーズ第三弾の長編。主人公はごく普通の女子高生です。美人女子大生の家庭教師が突如自殺した真相を探るために立ち上がった彼女は、ザ・ゾンビーズの力を借りて強く成長していきます。
この他、シリーズ完結編として、ザ・ゾンビーズ結成前夜を描いた「レヴォリューションNO.0」(金城一紀著/角川書店)も刊行されています。
読了後に「愛してるよ!!」と叫びたくなる!
このシリーズの魅力は、なんといってもキャラクターが一人ひとり輝いているところです。中でも筆者のお気に入りは≪史上最弱のヒキを持つ男≫山下です。彼の存在は、周囲を明るく照らしつつ読者をクスッと笑わせてくれます。もっとも秀逸なシーンは『SPEED』のラストで植え込みに頭から刺さるシーンでしょうか。そう、彼は地上のスケキヨになったのです。
いつも信じられないレベルで運の無い山下に、筆者は時々本気で同情してしまいます。他にも、大胆すぎる作戦を考える南方、強すぎる朴舜臣、男も女も惚れるアギーなど、個性豊かな面々が登場します。既存のルールに縛られない彼らのパワーで、物語は疾走感120%になります。
どの巻を読んでも感じるのは、あたたかくやわらかな愛情です。 読み終えた後に、なぜか「愛してるよ!」と叫びたくなります。あなたもきっと、家族や友人、恋人、道ですれ違った人にそう叫びたくなると思います。冒頭で「暑さを吹き飛ばす物語」と言いましたが、ゾンビーズたちの熱量でもっと暑くなってしまったらごめんなさい。
文/綾乃里綾里佳