ハロウィンに読みたい!とっておきファンタジー小説3選
(Photo by@sage_solar)
ハロウィンの盛り上がりはここ数年でどんどん大きくなっていますね。もともとは古代ケルト人が行っていた秋の収穫祭と悪魔払いの儀式で、日本のお盆のようなものだとか。亡くなった人の霊とともに魔物や魔女もこの世にやってくるため、魂をとられないように仮装をしたそうですよ。今回はそんなハロウィンにぴったりの小説三作をご紹介します。
戦う少女に、元気と勇気と幸せをもらおう。
荻原規子「西の善き魔女」(全8巻)(画像はAmazonより)
まずは西洋の雰囲気を感じさせる、正統派ファンタジー小説から。子供向けファンタジーと侮るべからず。作りこまれた世界観に驚嘆させられること間違いありません。
明るく快活な15歳の少女フィリエルは、父の弟子ルーンから母の形見のペンダントを渡されます。それをつけて舞踏会に行ったことから、否応なく女王後継争いに巻き込まれていきます。
作品の全編に散りばめられているのは、フィリエルの父やルーンが命を懸けた「異端」の研究です。知を追究したいという彼らの純粋な気持ちは、異端として迫害されます。異端とは何なのか、なぜ排除されねばならないのか、という疑問を抱えながら、フィリエルと一緒に少しずつ世界を知っていくことになります。
あなたの居場所は、本当にこの世界?
小野不由美「魔性の子」(画像はAmazonより)
続いてこちらは背筋がぞくっとするようなミステリーホラー小説。
教育実習のために母校に戻ってきた主人公広瀬は、ひとり異彩を放つ男子生徒・高里と出会います。「高里をいじめると、不慮の事故に遭う」。そんな迷信めいたことが現実に起こっていくのを目の当たりにし、広瀬は高里を庇おうとしますが……。
広瀬と高里に共通するのは、「自分の居場所はここではない」という感覚です。その感覚に苦悩する気持ちに、読んでいると息苦しくなるほどです。読後感も決して爽快感のあるものではなく、むしろ少しの後味が悪さと寂寥感を感じさせます。
それでもその後味の悪さをもう一度、もう一度と味わいたくなるような魅力がこの本にはあります。それは、ちょっとした表情や心理描写さえも鮮やかに描き出す筆致の巧みさによるものなのかもしれないし、人間のエゴが愛しく感じられるような表現力によるものなのかもしれません。
妖怪たちと、ハードな日常過ごしませんか?
香月日輪「妖怪アパートの幽雅な日常」(全10巻)(画像はAmazonより)
13歳のときに両親を失った主人公夕士は高校進学と同時にたくさんの妖怪の住むアパートで暮らすことに。夕士は妖怪アパートでの生活を通して様々なことを学び、吸収し、そして成長していきます。
そんなアパートに暮らす人たちは、人間でも超個性的。子供のラクガキのような顔をした詩人、ヤンキーの画家、陰陽師の卵の女子高生など、楽しい面々が揃います。適当にみえてもちゃんと「大人」で、夕士に、読者に、いろいろなことを教えてくれます。
そして本シリーズの最大の魅力は、アパートの住人がこぞって舌鼓を打つ、めちゃくちゃおいしそうな料理たち!手首だけの妖怪・るり子さんの作るこの料理の描写がとってもおいしそうで、読んでいるとおなかがすいてしまいます。るり子さんの日記やレシピが載った、『妖怪アパートの幽雅な食卓 るり子さんのお料理日記』という本まで刊行されているんですよ。
いかがでしたでしょうか。ファンタジー小説の魅力は、現実を忘れてその世界に没頭できるところです。ご紹介したどの作品も、あなたを物語の世界に連れて行ってくれるはずです。魂まで連れていかれないよう、ハロウィンの日には十分ご注意くださいね。
文/綾乃里綾里佳