テレビ局から「ひとり出版社」に転身した安永則子さんの“はたらく”とは?
現役大学4年生である筆者が就職活動をするなかで抱いた「はたらくってなんだろう?」という疑問。その答えに近づくためには、実際に社会ではたらいている方々に話を聞いてみるしかない!
こうして始まったインタビュー企画【はたらくってなんですか?】。
今回インタビューしているのは、1人で出版社「小さい書房」を経営している安永則子さん。大学卒業後テレビ局に17年勤務したのち、1人で出版社を立ち上げ、すでに3冊の書籍の出版に携った編集者だ。
インタビュー最終回では、就活生に対するアドバイスや「はたらく」について聞いてみた。
≪安永則子さんインタビューシリーズ≫
・安永則子さんインタビュー①
・安永則子さんインタビュー②
■「面白い!」も大事な嗅覚
Q.これから就活を迎える学生にアドバイスをお願いします。
安永さん:
私は的確なアドバイスをできる立場にないので、私自身のことで言えば、自分が「面白い!」と思う方向に行くしかないと思っています。これは大事な嗅覚だと思う。面白いと思ったら、大きい会社なら大きい会社に行けばいいし、小さい会社なら小さい会社に行けばいい。
規模の大小は、仕事の面白さを決める最も重要な要素ではないと思うんです。大きい会社だから安定して幸せになれるとも、小さい会社だからやりがいがあるとも決まってはいないから。
会社が小さければ、こぢんまりとしているけれど、物事の始まりから終わりまで仕事に携われる。会社が大きくなればなるほど一部に携わることになるけど、仕事全体のスケール感は大きい。私にとっては、どちらも面白かったんです。
■はたらき方を変えたのは、あくまで「自分」のため
安永さん:
1人で「小さい書房」をやっていると、プライベートと仕事の境界線がどうしてもファジーになってしまいます。「今、仕事してるから!」と子供との時間を楽しめない時もあります。締め切り間近の時に子供がきたら「あっち行ってて!」ということもあるわけです。そういう時は全然いい母親じゃない(笑)
そんな姿は、企業に勤めていた頃、あまり見せなくて済んでいたんです。会社と家でメリハリをつけられるでしょう? 平日忙しくはたらいて、土日に子供と目いっぱい遊んだほうが子供の精神上いいんじゃないかとさえ思う。
だから私は、子供のためにひとり出版社というはたらき方を選んだわけではなくて、あくまで「自分が子供とご飯を食べたい」からこのはたらき方を選んだんです。自己中心的だと思います(笑) 結局は「人それぞれ」ですね。
Q.「人それぞれ」ですか(笑)
安永さん:
本当に「人それぞれ」だと思うの。私は不器用なんですよ。だからたまたまこういう道を選んだ。
会社員としてはたらきながら仕事をして、子供との時間を過ごす。そんなはたらき方がいいと思ったら、そうすればいいしね。
▲目標とする増刷も決まった(写真は「小さい書房」HPのスクリーンショットです)
Q.今後も「ひとり出版社」を続けますか?編集者や営業は増やしますか?
安永さん:
続けます。でも、人は増やせないと思います。正直、ものすごい儲けられる気がしない(笑) 人を雇うと人件費がかかってしまうから、これからも1人でやるんだろうな、と思っています。
Q.最後に、「はたらく」ってなんでしょうか?
安永さん:
ありきたりな答えになっちゃうけれど、「世の中とつながる」ということだと思います。「私以外の人はこういうこと考えるんだ」と知ることが面白い。仕事で人とつながって、自分にないものに触れ、自分にないからこそ面白いと感じる。それが私にとって「はたらく」ということなのかな、と思います。
取材・文/信太 秀斗
≪安永則子さんインタビューシリーズ≫
・安永則子さんインタビュー①
・安永則子さんインタビュー②