【劇サーインタビュー】「モノづくりが中途半端な人ほど消えていく」演劇サークルってどんな所?
学祭で盛りあがる季節、「演劇サークル(=劇サー)」の学生は今最も忙しい時期を迎えているかもしれません。より良い公演に仕上げるためには、授業を犠牲にして練習する学生も多い「劇サー」。華やかな反面、忙しくて大変なイメージをもっている方もいるのではないでしょうか。
そこで今月は、劇サーに入っている3人の慶應生に彼らの学生生活について聞いてみました。
今回は、文学部社会学専攻2年のN君。演劇サークル「創像工房in front of.」で照明を担当しています。
クオリティの高さの理由は「教育」にあった
創像工房in front of. は今年、「東京学生演劇祭」で優勝した経歴をもつ活動的な演劇サークル。毎年20以上の企画の公演をしている創像工房、そのクオリティの高さについて訊いてみました。
―創像工房の完成度の高さの理由を教えてください!
これ、創像工房に入ってる身からして言うと(自画自賛してるみたいで)かなり気持ち悪いよね(笑)。
……ひとつの特徴として、「スタッフワークに力を入れている」っていうのはあるかな。
要は教育がしっかりしてる。創像工房では、毎年夏休み中にスタッフワークを教えるためだけの内向きの公演があるんだよね。各セクション別に講師がいて、新入生に数か月教える。
夏休み前の新人公演では、新入生はただ上級生の指示に従って動くだけなんだけど、この夏休みの講習で自分からどうやって動くのかを学ぶ。他の演劇サークルではやってないんじゃないかな?
―それは確かにしっかりしてますね!
あ、あと「お金かけてる」っていうのも一つの理由。一回の公演で多いときは100万以上かけるから(笑)。
クオリティの高さの裏にある「忙しさ」とは
-公演のクオリティが高いだけあって、サークル内は厳しくないですか?
体育会みたいな厳しさじゃないよ、僕そもそも体育会ノリ大嫌いだし。先輩から「あれやれ、これやれ」って命令されることはないかな。劇サーは後輩が自分から仕事をとっていくことが多いと思う……。厳しいんじゃなくて、忙しいだけ。
- 授業、切るときも結構ありますよね?
うん。役者は平日に公演があったら授業に出られるわけがないし、演技力が足りないと思ったら自主的に練習しなきゃいけないから、授業は自然と休むようになるよね。裏方だって、公演の準備でどうしても忙しくなるし。
授業に出ないのは、多分、みんな気合いが入ってるから。
劇サー全部に言えることだけど、モノづくりが中途半端な人はどんどん消えていく集まりだと思う。
▲公演時に用いる照明用の機材。扱うのが大変そうだ
-「創像工房in front of.」は慶應の三大宗教サークル(※)に数えられることが多いけど、そう言われてどんな気持ち?
僕はわかんないかな……そんなに自分の中では宗教だと思ってないし。(三大宗教サークルのどこも)モノを作るサークルだから、熱くなっちゃうんだろうね。
でも、色んなサークル見てて思うけど、創像工房は一番自由なサークルだと思うよ。上下関係厳しくないもん。
(※慶應の「三大宗教サークル」とは規模が大きく忙しい、創像工房、放送研究会、ダンスサークルESというのが専らの評判。と言っても、ほとんどのサークルは自分で参加率を決められるため、真偽の程は確かではない。)
公演前は朝から晩まで塾生会館が普通!
― 一番忙しい時期の一日の過ごし方を教えてください。
仕込み日は本当にシンプルで、8:30に塾生会館に行って、21:00までいる。それだけ。
21:30くらいまで打ち合わせをやって、そのあとひようらでご飯食べて、帰ったらまた家で会議して……朝4時まで話し合って寝て、また7時に起きて8時に塾生会館、ってことが前あった(笑)。
―体調、壊さないですか?
俺は体弱い方だから体調壊すよ。
― ……ごはん食べてます?
あんまり食べないなあ。ていうか、夢中になってるとお腹空かなくない(笑)?
授業に出ているだけでは味わえない「楽しさ」がそこにある
―最後に、 創像工房にいて楽しいことを教えてください!
毎公演後にお客さんにアンケートに答えてもらうんだけど、その答えがポジティブだと嬉しい。「面白かった」っていう抽象的なものでも、「公演の照明がよかった」っていうピンポイントなものでも。
自分で言ってて恥ずかしいけど、全サークルの中でも劇団員がいちばん涙を流すサークルだと思う。
本番前に円陣を組むんだけど、真ん中にチーフが入って、この公演に対する想いを言うことがあって。それを聞いて、本番が始まる前から涙を流す人もいる(笑)。
前回の照明チーフは相当大変だったのか、号泣しながら僕にすごい感謝してくれたんだよね。
……それを経験すると、「ここにいた方が授業受けてるよりも価値あるかなー」って思っちゃうんだよね(笑)。
「創像工房 in front of.」、想像以上にメンバー全員が一つの公演に力を注いでいる印象を受けました。この心意気で、公演のクオリティが低いわけがありません。
そんなモノづくりの最先端を突っ走っているN君ですが、2月15日~18日に「ワガハイは不器用星人であるっ」というコメディの舞台監督をやるそうです。公演が近づけば日吉キャンパス内で宣伝されるので、塾生会館周辺を注意してみてはいかがでしょうか。
公演情報
「ワガハイは不器用星人であるっ」
2016年2月15日~18日
作・演出 小林史明
-すごいことをしでかさないとー
素知らぬ顔で過ごしていても
常にたくらむ少年たちは
人混み紛れて「わはは」とさけぶ。
地球にダメージを与え続ける彼らの源。それは、雪だるま式にデカくなる好奇心なのだ!
アップテンポ雪だるまコメディ
次回は、慶應のミュージカルサークル「STEPS MUSIC COMPANY」に所属する女子メンバーにお話を伺います!
文/城見島ほのか