学生フリーペーパーの祭典!SFF2015に行ってみた
大学や町の本屋さんで見かけるフリーペーパー。全国の学生フリーペーパーが一堂に会する祭典があるのを、知っているだろうか。
その名も、Student Freepaper Forum。今年で10周年を迎える、人気イベントだ。
11月29日(日)、横浜BankART Studio NYKにて行われたこのイベントの魅力を、当日の様子から運営委員長・参加フリーペーパー団体へのインタビューまで、たっぷりとお伝えする。
会場は日本郵船の元倉庫をリノベーションしたアートスペース。このおしゃれな空間には、78ものフリーペーパー団体がブースを出展。来場者は各ブースでフリーペーパーを手に取り、制作者との会話を楽しんでいた。
圧倒されるのが、学生フリーペーパーのバリエーションの多さ。毎号テーマが違うもの、地域密着型のもの、ファッションを取り扱うもの、中には一人の女子大生が制作している競馬情報誌まであり、様々なフリペ団体がひしめきあっていた。
▲今回出展されているフリーペーパーを一度に閲覧できるスペース。種類の多さに圧倒される。
テーマの幅も広い。一人暮らし、旅、女子、恋愛、漫才……様々なテーマを各誌情熱をもって押し出している。中には、「太もも学入門」なんてテーマまで。ニッチなテーマ設定も、学生の熱量が詰まったフリーペーパーならではだろう。
展示されているフリーペーパーは、事前に雑誌編集者やアートディレクターなど、各界の著名人ゲスト36名に読まれている。そして各ゲストそれぞれが「心惹かれた一冊」を選定している。どのゲストがどんな視点でどのフリーペーパーを選んでいるのかも、SFFの楽しみ方の1つだ。
コンテンツはフリーペーパーの展示だけではない。フリーペーパー団体によるワークショップや、ゲストによる講演会も行われていた。
▲博報堂ケトル代表・嶋浩一郎氏による講演会。嶋氏の気になるフリーペーパー5誌と制作者のパネルディスカッションに、観客も引き込まれていた。
■運営委員長インタビュー
これだけのハイクオリティなイベントを提供するSFF。実は、運営に携わるメンバーは22人しかいない。この少数精鋭チームを束ねるリーダー、明治大学3年の徳田菜摘さんにインタビューを行った。
――10周年おめでとうございます!
ありがとうございます!
――SFFを運営するにあたっての、苦労とやりがいを教えてください。
苦労は……沢山ありますね(笑)。代表としては、私は全く人をまとめるような人間じゃないので、何をしてもらえばいいか考えて人を動かすというのは自分の中で戸惑いがありました。
全体としては、運営メンバーの人数が22人と少ないので、すべての状況が把握できる反面、イベントの規模が大きくなるにつれて人手が足りなかったり、一人一人のタスクが多くなったりしまうというのが大変なところですね。
やりがいは、ゲストの方に手書きでお手紙を書いてご協力いただけないかと依頼をしているんですけど、その時に是非やらせてもらいたいというお返事を頂いたとき。あと出展団体の方にはSFFを毎年楽しみにいらしてくれるという方もいらっしゃって、そういう方のお話を聞いたりするのは全部やりがいにつながっているなと思います。
――フリーペーパーの魅力って何ですか?
まずひとつ、無料ということで誰にでも気軽に手に取っていただけるということ。お金を払わないといけない雑誌に比べて、無料な分、好きなことに出会う可能性がフリーペーパーの方が多くあるんじゃないかと日々感じています。
もうひとつは、無料だからこそ自分の「好き」を思う存分やりたい放題できるということ。毎年すごく面白いフリーペーパーが集まるので、そこはしがらみのない大学生だからこそできる学生フリーペーパーの魅力だと思っています。
更に、今回は会場の中でも目立っていた2団体に突撃取材を敢行。制作者の想いに迫りたい。
■参加団体インタビュー:MAGADIPITA
▲バッハがどんなカツラで「装う」かを考えている、ユニークな表紙が目を引く。
まずインタビューするのは、慶應大学の国際交流団体S.A.Lが制作するMAGADIPITA。「装う」をテーマに据えて、白人が黒人を「装う」ミンストレル・ショー、最貧国コンゴで「装う」ことに全力をかける集団・サプール、などなどグローバルな話題へと誘う構成力が魅力の1冊だ。編集長の末永千紘さん(写真右から二番目)に話を聞いた。
――MAGADIPITAのコンセプトを教えてください。
“読むわくわくやドキドキの中で、新しいきっかけを提供する”ということです。
国際問題に興味のない学生、そもそも触れる機会がない学生にも興味を持ってもらい、ただ読むだけではなく自分の問題に置き換え、アクションを起こしてもらうことを目的としています。
――今号のイチオシポイントは?
「あなたに捧げる6のアイディア」というページです。普通の学生が、国際問題に対して何ができるかアクションを提示しています。何かを伝えて問題提起をしていても、行動まで提示するフリーペーパーは少ないんです。でも、何かに興味を持ったちわくわくした時、やっぱり人間は行動にうつすと思います。読者が興味を持った時に行動する一歩目を提示して、それを読者が汲み取りリアクションする。そこから、読者とのコミュニケ―ションが生まれると思っています。
フリーペーパーも対人コミュニケーションと同じように作り手と受け手の相互作用が可能であり、そのコミュニケーションがあって初めて、わたしたちの伝えたい事が『伝わる』ということなのだと考えます。
▲明日からでも実践できる、寄付やボランティアへの協力のヒントが6つ。読めばアクションを起こしたくなること間違いなし。
■参加団体インタビュー:LABORATORY
▲右がパンツ特集。小さなサイズ感が魅力だ。
5人ものゲストから「心惹かれる一冊」に選ばれていた、桑沢デザイン研究所の有志が贈る、LABORATORY。テーマは何と……パ、パンツ??編集長堀口朋奈さん(写真左)に、今号について話を聞いた。
――LABORATORYのコンセプトを教えてください。
LABORATORYは研究所という意味で、その名の通り、毎号違ったテーマについて研究しています。それに合わせて、装丁も変えています。「パンツ」がテーマの号では小さくてコンパクトなサイズ、「雨」がテーマの号ではじゃばら折にしてみました。スタイルを持たないのがスタイルです。
――今号のイチオシポイントは?
ひとつは、下着メーカーのワコールさんに取材したことです。「パンツフラワー」の企画担当の方にお話を聞いてきました。読者が知らないことが読み手に伝わればと思います。
もうひとつは、袋とじ。パンツというテーマの、ちょっと恥ずかしい感じを出してみようとチャレンジしてみました。
▲パンが二つで、パンツ。ユニークな写真ページの隣には、ドキドキの袋とじ企画が……!
学生の熱量をひしひしと感じられるイベント、SFF。来年の開催にも期待したい。
取材・文/越知恭子