【復活名店】人気ラーメン店を受け継いだ「中華そば みたか」が絶対変えないスタイルとは?
※この記事は、Cue編集部「Cue Vol.30 面倒くさいものほど素晴らしい。」からの転載記事です。
昭和24年に創業し、小説が出版されるほど人気があったラーメン店「江ぐち」が、2010年1月に社長逝去のため閉店してしまった。このお店を元従業員であった橋本さんご夫婦が復活させたお店が「中華そば みたか」だ。
江ぐちが閉店してしまった時には、“またやってくれ”や“私の人生の生きがいです”などという貼り紙を、当時の熱烈なファンだったお客さんたちがお店の入口に貼ってくれ、そういった出来事も復活の大きな後押しになったという。
▲人気のチャーシューメン(700円)。
変わらない「江ぐち」からのスタイル
「みたか」は、メニューも値段も、店内も「江ぐち」のころから変わらずそのままを受け継いでいる。変えない理由は、個人店というのが関係しているようだ。
まず、みたかの店内を見渡してみると、少し小さめの空間で席はカウンター席のみ。調理場はカウンターを挟んだ向かい側で、作っている姿を間近に見ることが出来る。湯切りの湯が飛んでしまうこともあるそうだが、それもご愛嬌だ。
そして、店内には食券機もなければ食洗機もないし、レジカウンターも見当たらない。というのも、みたかではお会計もすべて暗算、人の力でやっているというのだ。
それを続けていくのは大変なことに感じるが、橋本さんはこう語る。
「このやり方、このスタイルは絶対変えないつもりです。常連さんのお好みのメニューも全部把握できるんですよ、それって機械を入れないで人がするからこそ出来る事だと思います。もう、座ってから一言も発しない常連さんがほとんどですからね。
何にも言わなくても分かってくれてるっていう、阿吽の呼吸みたいのっていいじゃないですか。やっぱりこういう個人店って、そういうコミュニケーションの部分で、お客さんに自分の居場所があるって思ってもらえるのが強みだと思います。」
実際店内はとてもアットホームな雰囲気で、店員さんとの距離も近ければ隣のお客さんとの距離も近い。見知らぬお客さん同士がそこで言葉を交わす光景も珍しくなく、また俳優さんや芸人さんなどの有名人が来店することも多いそうだが、皆気さくに話をしているとのことだ。
「みたか」のこれから
「みたか」は、「江ぐち」の変わらない良さを残しつつも、改めた点がいくつかあるという。
「昔は今みたいに終始行列ではなかったですし、今のほうがクオリティが高いって言われてるんですよ。江ぐちのときは経営をやっていなかったので、もうなあなあだったんですけど、そのお店を大分きれいに立て直しました。
業者と交渉したり、細かいところから企業努力をしたりしていきましたね。そういう努力のおかげで、今までは従来の値段を上げなくて済むくらいの利益は出たんです。」
やはり受け継ぐことには、変わらない部分だけではなく変わっていく部分ももちろん必要なのである。橋本さんは、「江ぐち」の人気で「みたか」はオープンした時からずっと行列のできる店で、暇になったことがなく、暇になるのが怖いと笑っていた。
しかし「江ぐち」を引き継いだというだけではない「みたか」ならではの魅力がたくさん加わったこのお店は、きっと変わらず愛され続けるのだろう。
文・写真/Cue編集部
Cue編集部
大学生に「彩りのあるきっかけを」というコンセプトのもと、フリーペーパー『Cue』を編集・発行。最新号はvol.30『面倒くさいものほど素晴らしい。』
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