【復活名店】 かんだやぶそば~復活後も変わらないメニューと雰囲気
※この記事は、Cue編集部「Cue Vol.30 面倒くさいものほど素晴らしい。」からの転載記事です。
2013 年 2 月、東京・神田の老舗そば店「かんだやぶそば」の店舗が火災により半焼した。店は火災後営業休止を余儀なくされる。その後、火災から1 年 8 か月後に営業が再開。ファンは再開を喜び、再開初日に長い列をなした。
一方で、昔から馴染んだ味や店の雰囲気が損なわれてしまったのではないかと憂う声もあった。
復活後のかんだやぶそばは復活前と比べてどう変化したのか。今回は復活後のかんだやぶそばを取材した。
※画像は公式サイトのスクリーンショットです。
火災は1つのアクシデント。火事にも負けない店の自信
四代目店主である堀田康彦さんにお話を伺うと、店の雰囲気や伝統が失われたという不安は杞憂に過ぎないと気付いた。
「形ある物は必ず壊れるのでね。今回の火災は、100 年経過した建物が焼失したということで大きな話題になったんですけど、我々からすれば事業の継続という元々のプログラムの途中に起こった一つのアクシデントに過ぎないんです。
それに、私共のような代々家業として継続している事業体は、いつも次に繋げることを考えて仕事しているので、今回の場合も次の世代の準備は出来ていた。
そういったことからも事業の継続は基本路線としてゆるぎないものでした。だから中断した際も、まず早く再開するためにどうすればいいかを考えました。」
火災をあくまで1つのアクシデントとして冷静に捉える。店主のお話からは、歴史に裏打ちされた自信を伺い知ることができた。再開されるまでの間、かんだやぶそばの調理師たちは、技術のブランクを作らないために同業の他店に出向した。
「調理師たちが戻ることを前提に出向してくれたこと、また力あるお店が一人ずつ受け入れてくれたことは大変ありがたいことで感謝に耐えません。それはきっと、東京のおそば屋さん全体で考えたときにプラスになると、同業者の方々に捉えていただけたからだと思います。
我々の業界はもちろん競争社会ではありますが、誰かがいなくなると必ずしも自分のところが良くなるとは思っていません。それが我々の業界の持つ力なんだと思います。」
塀が取り払われた店の新たな姿
もう一つ大きな注目を集めたのは、塀が取り払われた店舗の新たな姿だった。
「賛否両論あるとは思います。でも、もう前のものは無いわけですから、その無いものの方が良かったと言われてもしょうがない。我々は街と共存するお店をつくることを選んだので、それが気に入らなければ他所で気に入るところを探してもらうしかない。それはお客様が選べることです。
我々は食べ物を提供する場だけでなく、都会の中にあって人々の潤いの場となる空間を提供したかったんです。短い時間でお腹を満たすためだけのお店も当然あっていいのですが、一方ではちゃんと座って人と向き合って食事をしたいという欲求は必ずあるので。その部分で我々の役割があるんだと思っています。」
外観は変わっても、内装、メニュー、値段など基本的にはほとんど変わってないという。常連客にとっては馴染みの、初めて訪れる者には新鮮な、女将の独特な品読み上げが今日も店内に響く。
文/Cue編集部
Cue編集部
大学生に「彩りのあるきっかけを」というコンセプトのもと、フリーペーパー『Cue』を編集・発行。
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