素通りじゃもったいない!知られざる石像の魅力とは……?
「石像」と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべるだろうか。
「気味が悪い」「なんか怖い」というような、マイナスなイメージが多いだろう。
しかし、石像には昔の人々の想いが詰まっているのだ。人々にとって大切なことがらだったからこそ、「像」という形のあるものにしたのだから。マイナスなイメージのままじゃ、昔の人々も浮かばれない。
「少しでも石像好きが増えますように」と願いを込めて。身近な石像を簡単に紹介する。
競馬場の近くにあるかも?馬のために作られた石像
馬頭観音像。
読み方は「ばとうかんのんぞう」。罵倒ではない。馬頭だ。
馬の健康を願ったり、馬を供養するために建てられたものである。馬頭観音という、怒った顔をした観音様が彫られていたりする。
昔の人は馬と共にいることが多かったからこそ、このような像も多く建てられた。馬と人との歴史も感じられる。今でも競馬場の近くに建てられたりするようだ。
懐の大きさは石像界№1?!
三界萬霊碑。
読み方は「さんがいばんれいひ」。「萬霊碑」「萬霊塔」などと書かれている場合もある。
「三界」とは、
「欲界」…欲望だらけの世界。
「色界」…だいたい欲望から解放された世界。
「無色界」…ほぼ完全に欲望から解放された世界。
に分けられる。あらゆる衆生が死んでは生まれ変わる、3つの世界のことを指す。
つまり、「ありとあらゆる全ての状態の、どんな霊でも供養しますよ」という石像だ。
なんとも太っ腹な石像だ。
戦争について考えるきっかけに。
彰忠碑。
読み方は「しょうちゅうひ」。忠魂碑などとも書かれる。
日清、日露戦争など、戦時下で亡くなった方々を祭っている石碑。横に亡くなった方の名前が何人も書かれた石碑が建っていることも多い。
大勢の人の思いが詰まっているからだろうか、大きなものが多い。
村の平和を守るのは、警察…ではなくこの石像!
道祖神。
読み方は「どうそじん」や「さえのかみ」。塞の神などとも書かれる。
村から邪悪なものを追い払ったり、子孫繁栄を願ってつくられた石像。要するに、村の平和を祈って作られた石像だ。
上の写真のように、シンプルに「道祖神」とだけ書かれていたり、下の写真のように男女の像が彫られている場合もある。
(photo by Kuraken )
※餅つき=子孫繁栄 を表す。
人々が飲み会を楽しんだ証!
庚申塔。
読み方は「こうしんとう」。
日本史で習ったことがある人も多いのではないだろうか。
60日に1度来る庚申の日の夜、人々が眠っているときに、三巳(さんし)という虫が体内から出てきて、天帝にその人の悪事を伝える。天帝はその悪事に従い、人の寿命を縮める、と考えられていた。
そこで人々は考えた。「ならば眠らなければ良い!」
「悪事をしない」とはならなかったようだ。(笑)
こうして、飲食や談笑をしながら楽しく夜が明けるのを待つ、「庚申待ち」という行事が生まれた。
「庚申待ち」を3年行った記念に建てられたのが、「庚申塔」だ。
この庚申塔、個性的なものが多く、見ていてとても楽しい。
例えば、
真ん中に青面金剛、横に夜明けを表す鶏、下には人が犯した悪事を「見ざる」「言わざる」「聞かざる」という意味で、日光東照宮で有名な三猿が彫られていたり、
青面金剛、とだけ彫られていたり、
三猿が立体的だったり。
他にも、観音様が彫られていたり、三猿が踊っていたりする庚申塔もある。フリーダムな信仰だったようだ。
終わりに
いかがだっただろうか。普段気にも留めない石像には、昔の人の想いがぎゅうぎゅうに詰まっている。
石像は神社仏閣にあるのはもちろん、道ばたや学校など、思いがけないところにあったりする。どこかで石像に巡り合った際、少しでも関心を持って頂けたら幸いだ。
文/狐兎