「早稲田ウィークリー、紙やめたってよ」。その理由は?
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▲早稲田ウィークリー編集部の窓口。カウンターにはでかでかと「紙をやめます」宣言が。
「ウィークリー、紙やめたってよ」。
早稲田大学の学生会館の一角に貼られたポスターには、大学のマスコットキャラクター「ワセダベア」がそんなセリフを呟きながらタブレットPCをいじっている。
「早稲田ウィークリー」は、早大生向けの週刊広報誌。「早稲田」という名前で創刊されて以来、50年にもわたって早大生の役に立つ情報を提供してきた。
しかし今年の4月にWebマガジンに完全移行が決定。紙のメディアとしての早稲田ウィークリーの歴史に終止符が打たれた。
▲早大生なら、知らない人はいない「早稲田ウィークリー」。今まではキャンパス内に設置されたラックに置かれていた。
なぜ紙からWebに移行したのか?Web化してから何が変わったのか?
早稲田ウィークリー編集部の木綿洋平さんにお話を伺った。
新しい可能性を秘めたデジタルへ
▲Webマガジンになった「早稲田ウィークリー」のトップページ。今週の特集は「日本ソマリア青年機構」の早大生へのインタビューだ。
Web化した経緯は、紙の冊子が「伸び悩んだ」側面が強い。
「学生の注目を引くために、色々内容を変えたりしてきているんですけど、期待よりも読者が増えた実感がしない。だから思い切ってWebマガジンに移行した方がいいと感じました」と木綿さん。
たしかに、デジタル化した方が早稲田ウィークリーの記事は多くの人の目に止まる。
紙媒体のときはキャンパス内でしか手に取ることができなかったが、Web上に掲載することで在校生以外も情報を入手できるようになる。
▲早稲田ウィークリー編集部の様子。
同編集部の稲生さんも、デジタルが発展している今だからこそ全面移行した、と話す。
「今の学生って、みんなスマホを持っているじゃないですか。だからWeb化することによって活路を見出すというか、新しい可能性を広げるというか。もしこれが5年前みたいなガラケーの時代だったら、こんなことは思いつかなかったと思います」。
Webマガジンに全面移行すると決めたときは、編集部内からも読者からも「紙の早稲田ウィークリーも続けたい」という声があがったという。しかし木綿さんは「まあ、そこは決断ですよね」と、思い切ってデジタル化に踏み切った。
紙時代の制約から解き放たれて
「紙をやめたら読者が減るのではないか」という不安もある中でWeb化した早稲田ウィークリーだが、媒体の形を変えたことによって様々な工夫を凝らすことができるようになった。
紙の早稲田ウィークリーは基本的に8ページ構成で、載せる内容量に限界があった。デジタル化したことによって次々と読者が読みたいページに飛べるようになり、ボリュームのある記事が増えた。
▲紙の早稲田ウィークリー。A3の両面刷りが2枚組合わさって、計8ページ。たしかに、これだと記事の分量が限られてしまう。
また内容量だけではなく、Webマガジンのデザインにも意匠を凝らしているという。
▲Webマガジン化した「早稲田ウィークリー」の画面。この記事では、エジプトの考古学を専門とする学者をインタビューしている。
「ただ単純に写真と原稿を決められたフォーマットに流し込むだけではなくて、デザインに凝ったページを作っています。例えば、『エジプト考古学の開拓者たち』を取材した記事は、微妙に背景が変わったり、ファラオの絵が画面の下からひょこっと出てきたりするようにしています」
▲最近『海よりもまだ深く』を公開した是枝監督のインタビュー記事。俳優の写真を画面いっぱいに見せ、読者の目を引くデザインになっている。
しかし、デザインを変えたからといって読者数が圧倒的に上がるわけではない。もっと頑張らなければいけない、と木綿さんは意気込む様子を見せた。
形は変わっても、常に学生を応援し続ける
Webに移行したことで、アクセス解析も可能になった。紙の早稲田ウィークリーの読者は大学生が中心だったが、現在は沖縄や北海道に住んでいる読者も生まれ、年齢層も20~60代まで拡大したという。
「でも、読んでいる人の中心は学生であることには変わりないです」と木綿さん。
「早稲田ウィークリーは元々、『早大生応援誌』というキャッチフレーズがあるんです。早稲田大学の学生生活をより豊かにするための情報メディアなので、形が変わっても学生向けのコンテンツを出していきたい。今でも、在校生にアンケートをとって『今の大学生が知りたいこと』をコンテンツの中心にしています」。
▲現役早大生の相談事に答えるコーナー「杜の相談室」の画面。「徹夜明けの過ごし方」について保健センターの職員が答えてくれる。
数か月間で読者層を大幅に拡大することができた早稲田ウィークリーは、Web化した成功例と言えるだろう。
しかし、木綿さんは「まだまだ成長中」と力を込めて話す。
「紙のときより読まれるようになった実感はあるものの、早稲田大学に在学している学生数と比べるとまだまだ。早大生全員が見てくれるようなメディアにしていきたいです」。
文/君島佳穂
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