「社会はいかにあるべきか」を考える契機を与えてくれる、ジョージ・オーウェルの作品とは
(Photo by Madelinetosh)
ジョージ・オーウェルという名を聞いたことはありますか?
「名前は聞いたことがある」、「全く知らない」といった声が聞こえてきそうですね(笑)
ジョージ・オーウェルはアメリカ人小説作家であり、トランプ大統領就任直後、彼の著作が突然Amazon書籍販売で1位になったことから、半世紀を経て再び脚光を浴びています。オーウェルが描く支配的世界にアメリカ社会が近づいていると危惧する人々が増えているからではないかとCNNは報道しています。
今回は、彼の著作で最も有名な2つの作品を紹介します。
『1984年』
(画像はAmazonから)
20世紀最大のディストピア小説と称される作品です。オーウェルがこの作品を生み出したのは第二次世界大戦後、つまり資本主義と共産主義という対立構造が明確化した時代でした。
そんな時代において彼は共産主義が支配する監視社会を鮮明に描き出しました。
簡単なあらすじ
1984年という近未来において(1949年出版のため)官吏として働く主人公の日常から描写が始まります。
歴史の改竄を行い続ける国家に対して不信感を持ち始めた主人公は、次第に反逆の意思を固めていきます。そんな中で国家反逆組織の存在を知った彼は反逆組織中枢人物に出会うことに成功。その出会いが人生の、また思考の大きな分岐点となることも知らずに…
資本主義の勝利が確定した今だからこそ、一歩引いて読むことができる作品ですが、出版当時を生きた人々への衝撃は計り知ることができません。
この作品は暴力的な要素を多分に含みながらも、人間の精神という深遠な側面に強く焦点を当てており、現代を生きる私たちにも大きな衝撃をもたらすことは間違いないです。
『動物農場』
(画像は楽天ブックスから)
オーウェルの作品の中で最も読みやすいのが「動物農場」です。
100ページにも満たない量ですし、表現も簡潔で大変わかりやすいものですが、ただの童話のように読むか寓話として読むかで大きく読後感が変わってきます。
簡単なあらすじ
酷い農場領主によって家畜動物たちが苦しめられている中、豚が反乱の旗手を掲げ、一致団結して領主を追い出すことに成功します。その後、豚が指導者となって、全ての動物が平等な農場社会の構築が進められていきます。
しかし、その社会は次第に存在理念を失い、狂暴化することとなります。領主を追い出した彼らが生み出した社会の末路とは…
この作品はスターリン体制の風刺、毛沢東の共産主義社会の予兆といったように説明されることが多いですが、実際のところ、近代以降の革命を公約数的に描いていると言えます。
登場する動物それぞれに革命の中での役割が風刺的に付与されています。そのようなことにも留意しながら読むとオーウェルの風刺表現がどれほど秀逸か体感できるはずです。
出版から半世紀以上を経て日本の労働状況とも酷似している点から、スタジオジブリの配給によって2008年12月よりアニメ上映されました。
ジョージ・オーウェルの作品は平等を目指す社会に潜む危険性を私たちに示してくれます。私たちが目指す社会はいかにあるべきかを考える契機を与えてくれる作品です。是非一読ください!
文/Покa