教えて現役大学生作家さん!日常生活のあれやこれ~河端朝日さんに聞く~
(photo by akida_)
GWも終わり、気付けばもうすぐ梅雨の季節。新大学一年生の皆さんは受験戦争の疲れも癒やされ、自由な生活を謳歌している頃でしょうか。
え、そんなことはない?五月病?
……だったら新入生もそうでない方も、何か新しいことを始めてみるのに丁度良いかもしれませんね!
今回はそんな(熱心な)人たちに向けて、現在大学三年生でありながら小説家も兼業する“河端朝日”さんにプライベートに迫るインタビューをしてきました!
Q1.自己紹介お願いします。
河端朝日さん(以下、河端):早稲田大学文化構想学部の文芸ジャーナリズム論系、今のところ(笑)二年(現在は三年)の河端朝日です。よろしくお願いします。
(インタビュー当日の河端さん。その手にはじゃがりこ)
筆者(以下、筆):今日はお忙しい中お越し頂きありがとうございます!どうぞよろしくお願いします。
筆:突然なんですけど、河端さんは趣味とかありますか?最近ハマっていることとか……。
河端:趣味……身体を動かす系は好きですね。実家が山に囲まれてて、そこでジョギングしたりとか。あとは通学時間の電車の中で本を読んだり、YouTubeを見たり……色々ですね。
筆:ご実家は確か山梨県ですよね、通学時間はどれくらいかかるんですか?
河端:乗り継ぎが上手くいけば大学まで1時間40分くらいですね。山梨っていっても場所がよくて。
筆:え、普通に三時間くらいかかると思ってました……。さっきYouTube見てるって仰ってましたけど、どういった動画を見るんですか?
河端:関連動画に流れてきたものを見る感じですね。でも最近はバーチャルユーチューバーとか見てます(笑)すごい動画が沢山あるんで手探りで色々見てますね(笑)。
Q2.大学のどんな授業が楽しいですか?
筆:大学で取ってる授業で「これめっちゃ面白かった!」っていうのがあれば教えてください。
河端:うーん……ちょうど秋学期なんかは自分がやりたい日本文学だとかサブカルチャーだとか、そういう自分の好きなことに絞って取ってましたね。火曜6限の「アニメーション文化論」という授業があったんですけど。遅い時間ではありますがその価値はある内容でしたね。
筆:えっ、そんな授業があったんですか?知りませんでした……絶対面白いやつじゃないですか、取りたい(笑)
河端:レポートとかも実際日本のアニメを取り上げて書いたりとか。僕は結構字数オーバーしちゃって書いたんですけど……。
筆:字数オーバー!どのくらいの規定だったんですか?
河端:2800字以上って言われたんですけど、4300文字くらい……(笑)本当に学部で学んでいることが自分のやりたいことに直結してて、そこは有難いというか嬉しいことですね。
筆:じゃあ自分の取りたいものが取れてるって感じなんですね。さっき仰った日本文学って近代とか現代とか色々ジャンルがあると思うんですけど、河端さんがいつも読まれるのはどんな本なんでしょうか?
河端:はい。変な話、読まず嫌いを無くそうと思っていて。本当に高校時代とかは読書が偏ってて、例えば『戯言シリーズ』など西尾維新にハマって(笑)そればっかり読んでたんです。それから、本を出させてもらうというのは本当に貴重な経験だとは思うんですけど、どうしても今までずっと狭い世界の中で生きてきたので……大学入ってから純文学とかも読み始めましたね。
筆:あっ、じゃあ小さい頃から文芸に親しみを持っていたという訳でもなかったってことですか?
河端:そうですね。小さい頃は角川さんの児童向けの文庫を読んでたりとかしましたね。本を読むのは好きで両親が教員をやっていることもあって沢山読んではいたんですけど。今でこそ村上春樹さんとか読みますが一番衝撃を受けたのは谷崎潤一郎ですね。ちょうど授業で彼を扱う時があって、試しに読んでみて「なんだこれは」って(笑)。「こんなのがあるんだ!」ってその時感動しました。
筆:その初めて読んだ谷崎の本は何だったんですか?
河端:『春琴抄』ですね。そこから『痴人の愛』とか『細雪』とか王道の方に行って。そこから日本に限らずフランス文学とかに触れ始めましたね。
Q3.授業は基本的に一人で受講しますか?
(photo by Steven S.)
筆:大学生って友達と講義受けたりすること結構多いと思うんですけど、その点河端さんはどうですか?
河端:そうですね、一人で受けてることの方が多いですね。本当に趣味嗜好最優先で授業を取っちゃうので、そこに他人を巻き込むっていうのはちょっと申し訳ないなというか(笑)僕、授業中に誰かと話してる人があまり好きではないんですよ(笑)そういう風には自分もなりたくないなーって意味で、極力その罪を犯さないように一人で受けてるっていうのはありますね。
筆:あー確かに……友達といるとその可能性高くなりますよね(笑)
河端:我ながらあんまり怒ったりすることはないんですけど、「それだけはちょっと」って感じですね(笑)
Q4.バイトってやってますか?
筆:大学生の代名詞といってもいいような「アルバイト」についてですが、何かやってますか?
河端:以前までは出版社の方でデータ入力とかちょっとした記事を書いたりをしてました。ただ、この春休みは自分がやってこなかったことをやりたいって思って建設業のバイトをやってみようかな、と思ってて。
筆:建設業!?あんまり選ばないですよね……現場で肉体労働、っていう感じですか?
河端:はい(笑)。ちょうど今戸山アリーナを作ってるじゃないですか(現在は完成済み)。あれを見てて「建設業ってカッコいいなー」と思って。
筆:この大学って学費の使い道謎ですよね。某光るクマとか……(笑)今はもうバイトはされてないんですよね?
河端:そうですね、今は有難いことに執筆が忙しくて。去年なんかは本当にたくさん書かせてもらったので。今シリーズものを書いてるんですけど、ちょうど第二弾の締め切りが七月だったんですけど……
筆:おっと……(不穏な空気)
河端:それはちょっとテストと被ることもあって……辛かったですね(笑)池袋のホテルに缶詰で。
これが話題に上がった「第二弾」。(画像はamazonより)
Q5.執筆時のルーティーンはありますか?
筆:小説を書く前に何かを食べたり飲んだり、極端な話瞑想したりとかってありますか?
河端:あー……今ちょうど探してる最中ですね。ちょっと前まではかなり迷走してて(笑)般若心経をYouTubeで10回リピートして聞いてたりとかしましたね。
筆:めっちゃ洗脳されそう(笑)それは書く前ですか?
河端:そうですね、書いている時は聞いてないですね。頭を空にするというか、何も聞いてない方が余計なものが入ってこなくていいのかなみたいな。
(photo by Sebastien Wiertz)
Q6.最近読んだ作品の中で「これ良かった!」っていうものがあれば教えてください。
筆:エッセイとか小説とか何でもいいんですけど……
河端:最近読んだ本だと名倉編さんの『異セカイ系』ですね。こういう帯に「東浩紀感嘆!」とか書かれると買うしかないって気持ちになります(笑)
筆:あ、それ聞いたことあります!確か新人作家の方ですよね。それはどういった内容の本なんですか?
河端:「小説を書いている人の本」って感じのメタフィクションですね。それこそ今流行ってる異世界転生とかも盛り込んでて。「こういう話の作り方もあるんだ」って新鮮だったというか、「小説って何やってもいいんだ」っていうのはこれ読んで思いましたね。
筆:面白そう!今度買ってみます(笑)他は何かありますか?漫画とか。
河端:漫画か……僕古本を買うのが好きでブックオフによく行くんですけど、2011年くらいに流行った『うさぎドロップ』っていう漫画のセットがあったんで衝動買いして(笑)この作品はキャラクターの心内描写が独特なんですよ。言語化がちょっと難しいんですけど、少女漫画とかでよく心内描写って四角形で囲われて描かれることが多いじゃないですか。でもこの漫画はそうじゃなくてそのコマの枠外にあって。自分の解釈ではあるんですけどなるべく心内語を作品の世界からは排除してるのかなって思って、中々ない手法だったので面白かったです。
(画像は筆者の手描きイメージ画像。河端さんの説明を図にしてみた)
筆:それも執筆に取り入れられそうですか?
河端:はい。自分が書かせてもらってるのは児童文庫なので、ほんとに勉強ぐらいの気持ちで(笑)
筆;吸収できるものは全部吸収していくスタイル、素晴らしいです……。
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Q7.大学生のうちにやっておきたいことはありますか?
筆:時間のある大学時代だからこそ何かやりたい!っていうのがあれば教えてください。
河端:去年の夏休みに徳島に行って四国遍路に行ったんですけど、それがまだ途中なので大学生のうちに達成したい、というのはありますね。
筆:え、めちゃくちゃ良い!(笑)お遍路さんだ!
(photo by Turner)
河端:歩きで徳島の二三軒のお寺を周ったんですがあと一月くらい必要で。これを始めたのもアニメの影響からで、『おへんろ。~八十八歩記~』というアニメがあって。女子高生三人がやってる四国のローカルなアニメなんですけど、「これいいじゃん」と思って始めました(笑)
筆:アニメの影響凄まじいですね(笑)
Q8.もう一回一年生に戻って第二外国語をやり直すとしたら何をやりたいですか?
筆:誰もが入学前に頭を悩ます事柄ですが……。河端さんは今は二外は取ってないですか?
河端:そうですね、二年になってからは取らなかったですね……今はフランス文学とかロシア文学とかを読むのでその辺りを学んで原典で理解できたら楽しいかなっていうのはありますね。
筆:分かります!原書で作品の良さを味わいたいし理解できるようになりたいですよね。
河端:早稲田の一年の春学期に基礎講義って科目があるじゃないですか。その時見た動画で外国の文学とか色々紹介されてて。もし選び直すとしたらフランス語かロシア語ですね!
筆:最近新しく選択できるようになりましたけど、アラビア語とかってやりたいと思いますか?
河端;あーでも面白そうだな、とは思います(笑)なんか字とか、綺麗だなとは思ってますね。
Q9.今までの自分の人生で一番影響を与えた作品は何ですか?
筆:人生っていう言い方がちょっと壮大な気もするんですけど(笑)現時点で一番自分の印象に残っている作品ってありますか?
河端:人生……そうですね、本を読む楽しみを教えてくれたという意味では、小学生の時に読んだエミリー・ロッダさんの『デルトラクエスト』という本が一番でしたね。
小学生時代の河端さんが愛読していた『デルトラ・クエスト』(画像はamazonより)
筆:あーー懐かしい!図書室にありましたそれ!(笑)
河端:(笑)。それにドハマリしたことがあって。全シリーズ四周くらいした記憶があります。最初のシリーズが8巻で次が4巻で、それを何回も図書室で借りるってことをよくしてましたね。
筆:それは何年生ぐらいの時なんですか?
河端:それは大体三、四年生ぐらいですかね。
筆:小学校の前とかはどんな本を読んでたんですか?
河端:小学校に上がる前とかは『かいけつゾロリ』とかが大好きで(笑)親に頼んで買ってもらって家でずっと読んでるぐらい。
筆:そこから本の世界に入っていったんですね。
Q10.卒業後の進路はどのように考えていますか?
筆:話は全然変わるんですけど、卒業した後、つまり就職とかって考えてたりしますか?
河端:就活はするべきだなとは思っています。今はまだ調べている途中で企業の説明会とかに行く、っていう感覚なんですけど、一応今興味がある職種は公務員ですね。
筆:えっそうなんですか!なんか意外でした(笑)じゃあ市役所職員とか?
河端:そうですね。人と関わる機会も多くて自分の世界が広がるのかなっていうのはありますね。
筆:じゃあ今のところ就活はする予定なんですね。
河端:はい。変な話「執筆にどう繋げられるか」っていうのを考えられたらいいかなっていうのがありますね。
筆:もし企業に就職することになったら兼業作家という形でこれからやっていくんでしょうか?
河端:今はもうそういう作家さんが多いのかなって思います。それこそ文化構想学部の先輩の朝井リョウさんとかちょっと前くらいまで会社に勤めていたくらいだし……それがあって『何者』とかも書かれている訳なんで。経験が全部作品に結びつくという意味ではいいかなって思います。
(画像はamazonより)
「大学一年生のときは趣味全開の授業の取り方をしていた」と語る河端さん。
「楽な授業ばかりを取るのは賢いやり方だとは思いますが、自分が好きなことなら多少辛くても絶対楽しいと思う」と終始笑顔でインタビューに応えてくれました。新入生の皆さんは彼の言葉も参考にして、秋学期の時間割を決めていくのもいいかもしれません。
温厚な性格で静かそうな見た目とは裏腹に、ルーティーンに一時期般若心経を聞き流したり四国遍路に行くこともしていたという中々ワイルドな面も併せ持つ河端さん。日常の学びを全て「物語を書くこと」に昇華するその真摯な姿勢に感銘を受けずにはいられませんでした!
そんな学生作家河端さんが書く『FC6年1組』シリーズは、第三巻まで発売中です。青春味溢れるサッカーチームの成長物語、是非皆さん一読してみてはいかがでしょうか?
『FC6年1組シリーズ』紹介ページ→https://miraibunko.jp/book/978-4-08-321443-1
河端朝日さん、ご協力頂き本当にありがとうございました!
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(文/一年明日)