【令和最新版】(変人)早大生に聞いた!秋の終わりに読みたい小説特集!
(photo by Ian Sane)
夏が終わると、いきなり寒くなる昨今。
「──あれ、今年、秋来てなくね?」
そんな思いを抱いている人も少なからず居るはず。小学生の頃に図書室だよりで何度も目にした“読書の秋”というワードを、大学生になった今でも堪能したい気分になったことはありませんか?
「せっかくの秋だから紅葉を見に行きたい、けど旅行するお金はない…」という方に向けて、今回は現役早大生に「秋に読みたいおすすめの本」を聞いてきました!
中にはかなり奇天烈なおすすめ理由を挙げている方もいますが、それも含めてお楽しみください。
早稲田大学を受験予定の高校生の皆さんも、先輩たちが今どんなものを読んでいるのか、息抜きの一冊として是非読んでみてはいかがでしょうか?
ちょっぴりグロめなテイストが抜群! 江戸川乱歩『柘榴』
(画像はamazonより引用)
推薦してくれた人➡法学部・三年生
推薦理由➡柘榴の旬が秋だから。
初手からちょっぴりマニアック。
刑事である「私」は、出向いた先の温泉旅館でミステリー好きの男「猪俣」と出会います。猪俣は、初対面であるにも関わらずどこかで出会ったことのある感じがする不思議な男でした。
「私」は自分が刑事であることを告げ、趣味で自分が解決した事件を記録していると話し、猪俣はそれに対して食いつきます。
そこで「私」が語り始めたのは、硫酸をかけられ顔が柘榴のようになった男の事件でした…。
江戸川乱歩といえば、日本ミステリーの金字塔。
柘榴をかじりながら、そんな彼が織り成す奇妙でグロテスクな世界に浸ってみてはいかがでしょうか?
ときめきポップな季節立て! 森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女
(画像はamazonより引用)
推薦してくれた人➡教育学部・一年生
推薦理由➡秋という季節感には欠けるかもしれないが、春・夏・秋・冬とそれぞれの季節に分かれた章立てになっていて、特に秋の章は主人公とヒロインの関係が変化するために印象深いから。
京都を舞台にし、京大生のひっちゃかめっちゃかな日常を独特なタッチで描き出す作品が目立つ森見登美彦。
アニメ映画化もされたことのあるこの作品は、推薦理由にもある通りある阿呆大学生とピュアな乙女の馴れ初めを季節立てで紡がれる物語です。
後輩である「彼女」に片思いをしている「私」は、どうにか自分に振り向いてもらうため、「彼女」という難攻不落の城の外堀を埋めることに東奔西走。「ナカメ作戦(ナるべくカのじょのメに留まる作戦)」という戦略を実行しながら試行錯誤するも、なかなか「彼女」は「私」の想いに気づいてくれません。
そんな中、2人はとある奇妙な人物と出会い、摩訶不思議な事件に巻き込まれていきます。物語は「私」と「彼女」の一人称視点を交互に織り交ぜながら進むので、節々で違った味わいを楽しめるのも魅力。
「あの葉がすべて落ちたら、自分も死ぬ」 オー・ヘンリー『最後の一葉(The Last Leaf)』
(画像はamazonより引用)
推薦してくれた人➡政治経済学部・二年生
推薦理由➡葉が落ちる時期になると、ストーリ―的にこの物語を思い起こすから。
アメリカの古典的作家、オー・ヘンリーの短編小説。
彼は約280もの短編作品を残しており、欧米ではサキ(イギリスの小説家)と並んで「短編の名手」と呼ばれているそう。
イギリスの作家だったE・V・ルーカスは「泊り客の枕もとに、オー・ヘンリー、あるいはサキ、あるいはその両方をおいていなければ、女主人として完璧とはいえない」と評しています。
つまり、サキもオー・ヘンリーもその頃から高名な作家だということ。
『最後の一葉』は小中学校の教科書にも採用されている小説なので、「読んだことある!」という人も居るかもしれません。
これは、ワシントン・スクエアにある、芸術家たちが集まる古びたアパートに暮らしている画家の「ジョンジー(ジョアンナ、あるいはジョアナとも呼ばれる)」と、同じく画家である「スー」の二人を主人公に進む物語。
二人は貧しいながらも幸福な生活を送っていましたが、ジョンジーはある日重い肺炎を患い、心身ともに弱っていきます。スーは医者から「もう彼女は長く生きられない」ということを知らされ、疲れ切っていたジョンジーは、窓の外に見えるレンガの壁を這う、枯れかけた蔦の葉をぼんやりと見つめながらこう言います。
「あの葉がすべて落ちたら、自分も死ぬ」
その晩、激しい嵐が吹き荒れ、翌朝には蔦の葉はなんと最後の一枚になっていました。しかし、「まだ最後の一枚が残っている」という奇跡的な光景を見て、ジョンジーは再び生きる活力を取り戻していきます。
感傷的な気分に浸りたい方は、是非どうぞ。
ラノベ界の金字塔 西尾維新『鬼物語』
(画像はamazonより引用)
推薦してくれた人➡文化構想学部・一年生
推薦理由➡阿良々木暦と八九寺真宵の友情が鮮やかに描かれていて、何より感動のラストシーンが秋の感傷的な心に染みわたるから。
こちらはラノベ好きの中では知らない人はいない!と言っても過言ではない作家、西尾維新の作品。“青春怪異小説”である『化物語』をはじめとする<物語>シリーズの第5弾として、2011年に刊行されました。
主人公である直江津高校3年の「阿良々木暦」と吸血鬼の幼女・「忍野忍」は、前作での「八九寺真宵」を救出するひと夏の冒険から帰ってきたばかり。
二学期が始まり、暦は真宵と出会って楽しい雑談の時を過ごしますが、以前真宵が忘れていったリュックサックを暦が返そうとしたその時、再び事件が起こります。
そこに現れたのは、「くらやみ」としか表現しようのない真っ暗な“何か”。
今までの経験でこの「くらやみ」が危険なものであると本能的に察知した暦は真宵を連れて逃げ出しますが──?
…続きは物語の中で。
何と言ってもシリーズが長く、話も繋がっているため、前作を読んでいないとなかなか理解がしづらいかもしれません。なので、まずは『化物語』から触れてみるのもおすすめです!
<物語>シリーズのほとんどはアニメ化がされているので、「全部活字で読むのはちょっと一苦労…」という人はアニメから入ってみるのもアリ。
日本を代表する作家による、初の長編作品 村上春樹『風の歌を聴け』
(画像はamazonより引用)
推薦してくれた人➡商学部・四年生
推薦理由➡小説の「秋感」がどういうものか分からなかったので「秋に読みたい」という要素は無視し、とりあえず早稲田大学関連ということで村上春樹を選んだ。秋におすすめするからといって秋を感じさせる必要はない、と思ったため。
…こちらもなかなかクセの強い推薦理由です。早大生らしいといえば「らしい」回答。
今回のテーマである「秋に読みたい」というポイントを完全に無視されてしまいました…が、物語の全体に広がる清澄な雰囲気がちょっとだけ秋の清涼感を感じさせてくれるかもしれません。
早大の第一文学部出身である村上春樹。国内外でも人気が根強い彼の作品ですが、『風の歌を聴け』はその中でも一般的な認知度が高い人気作です。
出版後のインタビューによれば、村上春樹は「チャプター1の冒頭の文章が書きたかっただけで、あとはそれを展開させただけだった」というようなことを語っているのだそう。村上自身も絶賛するその文章を味わいたい人は、ぜひ書店で手に取ってみてください。
物語が始まるのは、主人公の「僕」が1970年の夏の出来事を思い出そうとしている場面。『風の歌を聴け』は、前編が「僕」の一人称視点でセンチメンタルに語られていきます。
1970年の夏、「僕」はとある港町に帰省し、一夏中かけてバーで友人の「鼠」と取り憑かれたようにビールを飲み干しました。バーの洗面所に倒れていた女性を介抱し、家まで送った「僕」。しばらくして偶然立ち寄ったレコード屋で彼女に再会した「僕」は、とあるレストランで彼女と食事をし、実は中絶をしたばかりである、と告げられます。
そして冬にもう一度その街に帰ったとき、彼女は──。
まとめ
(photo by John Kannenberg)
近い未来には秋という季節感さえも無くなって、もしかしたら「読書の秋」は死語になっているかもしれません。
「そんなことはない」という声も聞こえてきそうですが、夏の暑さが猛烈に主張をし続けて「秋のちょうどよい涼しさ」が消えかけているのは事実。
ちょっぴりマニアックな早大生たちが選んだおすすめの本を、ぜひ令和元年の秋の終わりに楽しんでみてはいかがでしょうか。
(文/一年明日)